民間情報
橿原市本庁舎建て替え 市民不在の迷走劇
2021.6.21 カテゴリ2(民間情報)官公庁
本庁舎機能を既存公共施設に分散 現在地建て替えを断念
現庁舎の老朽化や耐震性の不足などを背景に、橿原市が進めてきた総事業費約57億7000万円の本庁舎建て替え計画が暗礁に乗り上げた。
亀田市長は、3月に事業費の増大に伴う現在地建て替えを断念する意向を表明していたが、6月11日の市庁舎建設事業等に関する特別委員会で、改めて現在地での建て替え計画を断念し、かしはら万葉ホールなど既存公共施設に本庁舎機能を分散させる方針を明らかにした。
新市庁舎建設の当初計画は、平成31年3月に策定。現在地に建て替え、目標延床面積は1万1500平方㍍、建設事業費は約65億7500万円としていた。10月の市長選で、本庁舎建て替え計画の見直しを訴えた亀田氏が当選し、令和2年3月、森下市長が策定した当初計画を見直して、7階建て、目標延床面積9500平方㍍、概算事業費57億7300万円とする計画を策定した。橿原市は7月20日、基本設計・実施設計を東畑・NASCA設計共同体と2億350万円で業務委託締結。令和4年10月本体工事着工し、同6年3月完成予定で進めていた。
しかし、業務委託した共同体が地質調査の結果、地盤が当初想定より軟弱であるため基礎工事等の耐震性確保や現庁舎解体に伴うアスベスト撤去費用などが最大で12億円に膨らみ、概算事業費が69億4500万円に膨らむ見通しとなった。2月13日、開催した新本庁舎建設検討委員会で報告された。
これを受けて亀田市長は3月、現在地での本庁舎建て替えを断念する意向を表明したが、3年度当初予算に本庁舎建設事業費として2億2260万円(設計費・1億5100万円、用地開発工事費6100万円)計上、当初予算は可決された。
そもそも橿原市本庁舎の建て替え問題は、首長の交代で「ちゃぶ台返し」に。前任者が進めてきた公共事業の見直しを表明するも、新たな道筋を描ききれず事業が迷走している。選挙によってもたらした変化によって、このような不測の事態は市民の混乱を招く恐れがある。
亀田市長の代替案、既存公共施設へ本庁舎機能を分散させるにしても、議会承認(出席議員の3分の2以上)が必要となり、ハードルは高い。
建物の老朽化、高齢化・人口減少、税収減といった様々な課題に直面する公共建築づくり。成熟社会に見合った公共建築づくりをどう進めていくか。事業を円滑に進めるためには、住民の意見をいかに吸い上げ、合意形成を図っていくかが問われている。二転三転する橿原市本庁舎の建て替え問題は、市民不在の迷走劇と言える。