一般記事

国交省技術集団 直轄診断結果を報告 奈良市「鶴舞橋」老朽化対策 モニタリングと計画的修繕 長寿命化へ耐震補強を検討

2022.2.17 近畿地方整備局

国土交通省の道路メンテナンス技術集団は、奈良市管理の「鶴舞橋」について直轄診断結果を報告した。これを受けて奈良市は、モニタリングと計画的修繕及び耐震補強を検討していく―としている。
近畿地方整備局奈良国道事務所は、令和3年2月8日より直轄診断を実施していた奈良市が管理する「鶴舞橋」について結果をまとめ、道路メンテナンス技術集団が奈良市役所秘書広報課分室東側会議室で老朽化対策の技術的助言として同市へ報告を行った。
国土交通省では、地方公共団体への支援として要請により緊急的かつ高度な技術力を要する施設について、地方整備局と国土技術政策総合研究所及び土木研究所の職員で構成する「道路メンテナンス技術集団」による直轄診断を平成26年度から実施している。
まず、種蔵史典奈良国道事務所長が報告書を仲川げん奈良市長に手渡し、WEB開催のためモニターにより参加していた細井正也近畿道路メンテナンスセンター長が直轄診断の概要を報告して技術的助言を行った。仲川市長は「人口の多い市西部地域の橋梁で市民生活への影響は大きい。維持管理・長寿命化のため報告を踏まえてモニタリングと計画的修繕、さらに耐震補強を検討していきたい」と応じた。
続けて「国土強靭化へ向けて優先順位を設けて進めていくことにしているが、地方自治体では専門的技術者が不足している一方でそのニーズは大きい。今回このような技術的指導をいただき、ありがとうございました」と礼を述べた。
鶴舞橋は、鶴舞東町に市道登美ヶ丘中町線の橋梁として昭和35年に建設された11径間PCプレテン単純床版橋で、学研奈良登美ヶ丘駅と学園前駅を結ぶ。橋長97㍍全幅員9・60㍍。交通量は1万7000台/日。建設後60年以上が経過して老朽化し、平成5年に旧歩道部の鋼板接着補強が実施されている。直轄診断の主な結果は舗装のひび割れ、橋台や桁端部からの漏水、補強鋼板の減肉、コンクリート欠損。技術的助言は次の通り。
▽今回確認した範囲では現状の荷重載荷状況のもとであれば、直ちに落橋等の致命的な状態に至る可能性は低いと考えられる。
▽全体として旧車道部・旧歩道部の接続部に設置された縦目地や桁端部からの漏水の処理が改善されない限り、今後もこれらの劣化が進行するとともに支承部等の変状の発生が懸念される。
▽鶴舞橋の状態を変えないようにするためには、少なくとも排水・防水を改善するのがよい。
▽なお、旧歩道部の補強鋼板についてはその役割・耐荷メカニズムには不明点が残ることから、鋼板補強の有効性や、桁の上面の状態や桁端部・支承回りの状態を詳細に把握することも検討するのがよい。鋼板補強の有効性が確認されるまでの間はさらなる変状の発生がないか監視を続けるのがよい。
▽縦目地部の排水や防水の検討においては維持管理性・長寿命化の観点から主桁の一体化もひとつの方法になり得るが、一体化の方法は輪荷重による繰返し載荷の影響の考慮、旧歩道部の補強鋼板の扱いなど複数の観点から方法を比較・検討するのがよい。
▽今回の調査では耐震性についての検討は行っていないが、鶴舞橋の耐震性については不明確な点が多いと考えられることから、鶴舞橋に求める機能を明確にしたうえで、前記の排水・防水対策に加えて鶴舞橋の長期的な維持管理を考えるときには耐震性評価や耐震補強の必要性と方法の検討を同時に行うことで、双方にとって合理的な対策となるように検討する必要がある。
(吹上)

会員登録
一覧に戻る