一般記事

県文化財保存事務所 5年1月~10月に 国宝興福寺五重塔素屋根建設

2021.8.10 県文化・教育・くらし創造部

 奈良県文化財保存事務所は、国宝興福寺五重塔素屋根を令和5年1月~10月に建設する見込み。予定工事費は約10億2000万円を想定している。実施設計を9月1日に開札して業務を委託する。
 奈良県文化・教育・くらし創造部文化財保存事務所は、一般競争入札「国宝興福寺五重塔素屋根実施設計業務3文保委第2号」を9月1日に開札して業務を委託する。業務は国宝興福寺五重塔素屋根建設工事の実施設計、住民説明会の説明補助及び資料作成。委託期間4年3月28日。予定価格2219万8000円込、調査基準価格1815万円込。
 敷地面積約3900平方㍍。施設計画ではS造10階建延べ面積約8126・03平方㍍(内部足場・登桟橋と階段・資材搬入出口及び垂直搬送孔のほか解体部材格納棚を内部に設け、設備は照明設備・電気コンセント・工事用の人荷用エレベーター・ホイストクレーン・防災設備等を備える)。
 立地条件は史跡興福寺旧境内及び名勝奈良公園内であるため掘削を伴わない基礎工事が必要。また、当該地は観光目的の来訪者が多く周辺道路の通行量も多いため、仮設計画を作成するに当たっては資材搬入計画や組立工法等において歩車分離を意識して迂回路等を設けるなど通行者への安全対策に万全を期し、影響を極力軽減することが不可欠。また、興福寺五重塔の屋根葺替を中心とした保存修理を行うことを踏まえ、保存修理現場の公開も含めた工事の作業性を確保する。
住民説明会の説明補助及び資料作成では、境内周辺の住民に対する工事内容に関する説明補助、またその時に用いる工事の概略を示す簡単な資料を作成する。工期は10・5ヵ月以内が必須条件で、5年1月~10月を工事期間、予定工事費約10億2000万円を見込んでいる。担当は事業係(電話0742―27―9865)。
国宝興福寺五重塔の保存修理に係る全天候型仮設足場を建設するための素屋根建設基本設計は伸構造事務所、地質調査は三協エンジニアが担当して令和2年度に実施している。
一般競争入札「国宝興福寺五重塔耐震診断業務3文保委第3号」を開札、落札した清水建設に業務を委託した。業務概要は国宝興福寺五重塔の保有耐震性能を確認のうえで必要耐震性能を有するか評価する。委託期間4年3月28日。
 昨年度に地質調査が行われており、その結果と今回の業務で実施する現地調査結果をもとに構造診断を行い、必要に応じて補強案を策定する。
▽常時微動測定=測定方法は常時微動計測と人工加振による微動計測を行う。計測点は塔身では4点×5層×3方向とし、心柱6点×2方向、基壇1点×3方向、地盤1点×3方向で測定を行う。
▽3次元スキャン計測=五重塔の内外部すべての3次元スキャナーによる計測を行う。スキャン後のデータ整理は所要寸法が計測できる点群データ整理までとし、サーフェスモデルの作成は行わない。
▽木材の非破壊検査=初層柱・尾垂木・地垂木・大斗その他必要と思われる部材の非破壊検査を実施する。検査方法及び内容は超音波法による強度推定及び劣化調査を行う。
▽部材の実測調査及び図面作成=各部材の材種と架構状況や各部材寸法及び仕口・継手等の部材接合の状況や納まり、構造的な破損状況の調査を行う。
▽耐震診断=時刻歴応答解析による耐震診断を実施する。使用するソフトは多層塔の解析に適し、荷重条件の変更にも対応できる汎用性のあるもの①立体解析モデルの作成②固定加重の算出③静的応力解析④入力地震動⑤保有耐震性能の評価・必要耐震性能の設定。
▽補強案策定=構造診断の結果として構造性能が不足する場合は補強案の検討を実施する。来年度以降に実施予定の保存修理地業で屋根葺替工事程度を予定しているため、基本的にはその範囲内で行える構造補強を検討する。補強案は建物の文化財的価値を考慮しながら複数の案を提示する。また、提示した各補強案について保有耐震性能の評価を行う。
▽報告書作成=以上の業務について診断書と報告書にまとめ、業務完了後に提出する。

会員登録
一覧に戻る