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県病院マネジメント課 「基本構想」を策定 新西和医療センター整備で JR王寺駅南側へ移転 病床数は280床程度

2022.9.6 県福祉医療部

 奈良県福祉医療部医療政策局病院マネジメント課は、西和医療センターの診療圏の現状を分析、課題とその対応を検討し、西和医療センターに期待される役割を整理したうえで、新西和医療センター整備の考え方の方針を定め、建替整備の場所の検討も行って「新西和医療センター整備基本構想」を策定した。
 基本構想では、『西和地域における重症急性期を担う基幹病院』を基本コンセプトに、整備場所について「JR王寺駅南側地区への移転建替が効果的」、施設規模について「病床数は概ね280床程度」としている。
施設の老朽化や耐震性の問題があることから「地方独立行政法人奈良県立病院機構第2期中期目標・中期計画(平成31年度~令和5年度)」において、西和医療センターの今後のあり方を検討することとした。さらに現在は「令和4年度新西和医療センター整備基本計画策定支援業務」を長大奈良事務所に委託して進めている。
既存の病院施設の状況は、三郷町三室1丁目14番16号の敷地面積1万9744平方㍍(うち借地2271平方㍍)に昭和53年12月竣工の本館・南病棟SRC造地下1階地上6階建延べ面積1万8863平方㍍、事務棟RC造3階建延べ面積1325平方㍍、その他延べ面積1652平方㍍の計2万1840平方㍍。28診療科で一般病床300床。常勤職員数(3年3月現在)で医師70名と看護師・助産師299名など計542名。
【西和医療センターの診療圏の現状】
入院患者のうち西和7町の患者割合は約75%となっており、西和地域の多くの患者が利用している状況で、それ以外は香芝市と広陵町からの患者が多い状況となっており、西和7町と香芝市・広陵町からの患者が90%を占めている。利用者が多い西和7町と香芝市・広陵町の 75歳以上人口は2015年から2030年にかけて58%増加(+1万8000人)し、その後は2045年まで横ばいの見込み。一方、総人口は減少が続く。2025年までは多くの疾患で入院患者数は増加するが、2025年以降は 多くの疾患で入院患者数は減少する見込み。2035~2045年にはほぼすべての疾患で入院患者数が減少する見込みとなっている。一方で消化器と呼吸器が診療圏に所在する病院の診療実績で推計患者数をカバーできておらず、他の地域で受療していると考えられる。
西和7町と香芝市・広陵町には9病院が所在し、うち年間1500~3000件の救急搬送を受け入れている病院が3病院(西和医療センター、恵王病院、香芝生喜病院)あり、中規模分散型で、西和医療センターは香芝生喜病院と同程度の約3000件を受け入れ、救急医療において中核的な役割を果たしている。西和7町が含まれる西和医療圏には、高度急性期医療を中心とする近畿大学奈良病院が生駒市にあり、あまり特定の機能に偏ることなく機能別に病院が所在している。
【新西和医療センター整備の考え方(方針)】
新西和医療センターがめざす姿として『西和地域における重症急性期を担う基幹病院』を基本コンセプトに、新病院の整備は、医療機能の充実・強化だけでなく将来を見据えて県民が安心して暮らせる、ゆるぎない医療を提供するための考え方を明確にして①患者・患者家族として病院を利用する人々の満足度②病院で働く職員の働きがい③地域の医療機関と協力して地域社会への貢献度―を向上する病院をめざす。新西和医療センターが担う役割は次の3点
▽二次救急病院=今後増加が見込まれる心筋梗塞・脳卒中と転倒等による頭部外傷や骨折に対応できる医療の提供体制を整える。西和地域における二次救急搬送の応需率をさらに高める年間3400件を応需ため救急科・総合診療科の専門医を置くとともに、院内の各診療科との連携体制を強める。一方で脊髄損傷・多発外傷・熱傷・中毒等は三次救急病院に対応してもらう。また、小児救急の充実に取り組む。
▽地域医療支援病院=患者の紹介・逆紹介の推進により地域の医療機関との連携を深化するとともに、これまで西和地域において診療の実績を積み重ねてきた「循環器系疾患」領域に加え、地域の高齢化に伴い発症数の増加が見込まれる「消化器系疾患(がんなど」「脳卒中・循環器病」「筋骨格・外傷(骨折など)」領域に係る診療機能を充実させる。脳卒中の急性期治療として一次脳卒中センターの役割を担う。
▽「救急(三次)」「がん」「小児」「周産期」=県総合医療センターと役割を分担して連携を強めつつ、地域で必要な「小児医療」「糖尿病」「感染症」などの医療を提供する。
王寺駅周辺のまちづくりと連携する施設とするとともに、災害に強い施設整備を行う。また、 急な感染症パンデミックにも迅速に対応できる建物の構造を検討する。
【整備の検討】
〈整備場所〉
再整備の場所については「現地での建替」とJR王寺駅の南側を移転候補地とした「移転建替」の両方を検討した(①メリット②デメリット)。
▽現地建替=①新たな用地取得が不要で早期事業着手が可能②敷地内に余剰地が少ないため2工区に分けて施工する必要があり工期が長くなる。敷地が傾斜地のため大規模な造成・擁壁・土留等が必要となる。建替期間中 に一定の医療機能の制限が発生するとともに工事による騒音や振動などの影響を受ける。
▽移転建替=①公共交通機関 (鉄道・バス)が充実しているためアクセスが良く商業施設や行政機関等の都市機能が集積し病院利用者の利便性が大きく向上する。現地建替と比較して短い工期で整備が可能。建替期間中に医療機能に制限がかからない。町がめざす医療・福祉・子育てと商業及び行政サービス機能などを集積する西和地域の拠点づくりに合致する。移転建替と併せて西和地域全体の健康増進や地域包括ケアの拠点となる施設が集積することにより医療・介護等の一体的な提供が期待できる②JR王寺駅南側は大和川洪水浸水想定区域となっており3㍍~5㍍の浸水が想定されているため浸水時に病院機能を維持できるような浸水対策と病院アクセスの検討と、候補地がJR及び王寺町等の所有地であるため用地取得・補償の調整が必要。
移転建替のデメリットである当該地が浸水想定区域内であることについては①主要病院機能を2階以上に配置②非常用電源や空調設備を屋上等に配置③敷地内への浸水防止のための擁壁設置④浸水時の病院アクセスの確保―による対策が考えられる。また、当該地が JR所有地や町有地が一部含まれていることについては、JRや王寺町等関係者と協議・調整により円滑な事業実施を図りたいと考えている。
これらを踏まえ「現地建替」より「移転建替」が効果的と考える。
〈施設規模〉
施設規模の詳細は基本計画で検討することにしているが、「新西和医療センター整備の考え方(方針)」を実現する病床数について①現在の入院患者数から年齢構成の変化を踏まえて将来の入院患者数を推計②救急医療体制強化による将来患者数を追加するなど新西和医療センターが担う役割を反映③平均在院日数の短縮による入院患者日数の減少を加味―を踏まえて検討して1日当たり入院患者数を算出し、病床稼働率90%と仮定すると概ね280床程度となる。

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