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公共投資15%減 全国都道府県3年度当初予算

2021.7.2 その他

日経が今年2月から4月にかけて、全国都道府県の令和3年度の当初予算の調査を実施した。それによると、知事選を控えて骨格予算を組んだ秋田県と千葉県を除く45都道府県の当初予算の総額は、前年度比8.3%増の54兆8532億円(表参照)。大半の自治体が新型コロナウイルス感染症の対策費を投入したことで、高い伸び率となった。
見出し
・公共投資15%減 「コロナ予算」の余波
・厳しい財政状況でも公共事業は不可欠
・「緊急浚渫推進事業債」の活用
・本文(96行)
都道府県や主要都市の今年度予算の中心は、新型コロナウイルス感染症への対策を軸とした予算編成となり、コロナ禍の影響で地方税収も減少している。公共事業などに充てる投資的経費は、前年度と比較可能な45都道府県全体で約15%減った。厳しい財政状況でも計上する公共事業には、防災対策や「アフターコロナ」を見据えた取り組みが目立っている。
一方、コロナ禍で、法人事業税と法人住民税など地方税収は前年度比7.1%減と落ち込んだ。コロナ対策費用を捻出するために、各自治体は臨時財政対策債を増発。45都道府県全体の増発率は前年度比80.2%増となった。こうした状況から、45都道府県が組んだ公共事業の予算は控えめだ。インフラ整備などに充てる投資的経費は45都道府県の合計額が前年度比14.8%減の6兆7640億円。減額した自治体は9割弱の39都道府県に上った。
投資的経費の増減率で、下位3自治体には東日本大震災で被災した東北3県が並ぶ。下から順に、前年度比64.6%減の岩手県、同56.3%減の宮城県、同48.8%減の福島県だ。それぞれ、東日本大震災などからの復旧・復興事業が進んだことで今年度の公共事業費が減り、投資的経費の下げ幅が大きくなった。
ただ、投資的経費の減少理由として、政府が昨年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」を挙げる自治体も多かった。令和2年度の補正予算に盛り込み、前倒して実施したことが、今年度の当初予算減につながった。投資的経費のうち、自治体が補助金などを得ずに実施する事業に充てる単独事業費は、45都道府県全体で前年度比7.7%減。主要都市は、47市全体で同0.4%減とほぼ横ばいだった。
15.4%増で3位の山梨県は、国の「緊急浚渫(しゅんせつ)推進事業債」を活用した事業に、約20億円を計上。前年度に比べて17億円ほど増額した結果、単独事業費の増加につながった。
総務省が令和2年度に創設した「緊急浚渫推進事業債」の活用は、今年度も活発な動きを見せている。
この制度は、氾濫を引き起こす要因となる河川区域内の堆積土砂や流木などを取り除く浚渫事業に充当できる地方債だ。自治体の単独事業として緊急的な浚渫が可能であることに加えて、浚渫後の土砂の処分や樹木の伐採作業なども対象にできる。
新型コロナウイルス感染症拡大の収束が見えないなかで、コロナ対策は多くの自治体が最優先課題と位置付けている。ただ、そうした状況においてもインフラの維持・整備は、自然災害の脅威や老朽化に備えるべく、止めるわけにはいかない。厳しい予算繰りのなかでも、堅実な事業遂行が不可欠だ。

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