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12億トンのCO2を排出 建設業界でも削減へ加速

2022.1.21 その他

昭和31年4月、熊本県水俣市(みなまたし)で起こった水俣病。第二次大戦後の日本における高度経済成長期の負の側面である四大公害病の一つである。
高度成長に不可欠なプラスチックの原料の一つであるアセトアルデヒド。それを生産する国策企業による環境破壊で、立場の弱い漁民らが大きな被害を受けた。65年以上も前に水俣で起こったことは形を変え、規模を大きくしながら今も続いている。東京電力福島第1原発事故がそうだ。そして、次は気候危機である。
菅前首相は昨年10月、臨時国会の所信演説において、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。いわゆる、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言した。この宣言を契機として、建設業界でも二酸化炭素排出量を削減する動きが、大手企業を中心に加速している。デベロッパーなどの発注者も例外ではない。建設会社に対して、排出量の開示や削減を要求し始めた。
我が国は現在、年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出しており、これを実質ゼロにする必要がある。このカーボンニュートラルへの挑戦が、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想で、日本全体で取り組んでいくことが重要である。
先進国の富裕層や大企業が大量に排出している温室効果ガスが引き起こす地球温暖化で、真っ先に大きな被害を受けているのは、貧国の農民たちだ。「持続可能な開発」という概念が提案されて久しいが、無限の成長を求める資本主義の営みは変わらず、問題は大きくなる一方だ。持続可能な開発とは、単に開発を続けるためのキーワードだった。今はやりの「持続可能な開発目標(SDGs)」もそれにゴールの「G」が付いただけで、必要な構造転換をもたらすものになっていない。だがSDGsが多くの人に受け入れられる魅力はそこにある。
重要なのは開発ではなく「持続可能」のほうだ。地球の許容できるものは有限なのに、人類の営みはそれを大きく超え、次世代の未来を脅かしている。持続が大切と考えるならば、無限の成長願望から脱却しなければならない。
今の構造を変えることは簡単ではないが、新型コロナ禍は、政府がやろうと思えば、強力な規制も導入できることを示した。気候危機の解決を求めて声を上げ始めた若者たちは、明らかにこれまでとは違った価値観を持っている。そこに変革への希望を見出したい。

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