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県文化財保存事務所 耐震改修優秀建築賞に 重要文化財「称念寺本堂」保存修理

2024.2.2 県文化・教育・くらし創造部

 奈良県文化・教育・くらし創造部文化財保存課は、文化財保存事務所が設計・施工した「重要文化財称念寺本堂」(橿原市)の保存修理工事が、一般財団法人日本建築防災協会の「耐震改修優秀建築賞」を受賞した―と公表した。
称念寺は浄土真宗本願寺派の寺院で、寺内町今井町の形成と発展を支える町政全般の拠点。重要文化財称念寺本堂は、今回の解体修理工事中に発見された肘木墨書により、寛永18(1641)年からそれほど降らない時期に建立されたことが明らかになった。
今回の同文化財の保存修理工事は、軸部の弛緩や傾斜のほか、雨漏り・虫害による損傷が著しく、このまま放置できない状況にあったため実施されたもの。平成22年4月~令和4年3月までの工期144ヵ月をかけて解体修理を行った。本堂に着手する前に周辺建物を解体したうえで、本堂に覆屋(素屋根)を建て本堂を全解体した。発掘調査の後に基礎工事、木部を組立・瓦屋根を葺いた。修理では古い部材は可能な限り再用し、また同時に耐震診断と耐震補強も実施した。
今回の「耐震改修優秀建築賞」では文化財保存事務所が、竹中工務店及び大阪工業大学と共に開発し、施工した独自の耐震補強が高く評価された。具体的には次の3点が評価のポイントとなった。担当は保存修理・人材育成係(電話0743―86―4483)。
▽本堂の床下に補強材を用いる構法(長押補強)を採用することで室内及び室外の外観を変更することなく、最小限の補強により建物全体に効果を発揮する構法を開発したこと。
▽補強材には既にある建築材料(木材や金物)を使うことで、特殊な技術や材料の開発が不要で、将来の取外しも容易な構法となったこと。
▽県文化財保存事務所が実施する文化財保存修理工事に、竹中工務店と大阪工業大学が参画することで産官学の連携を実現し、新たな構法を開発したこと。

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