一般記事

県・市町村長サミット 効率的な活用へ ファシリティマネジメントの推進

2021.10.26 県総務部

奈良県は、令和3年度第2回県・市町村長サミットを10月19日に奈良春日野国際フォーラム甍で開催、「ファシリティマネジメントの推進」をテーマに公共施設の効率的な管理・運営の実現への手法として広域連携や施設の集約・複合化と民間活用について意見を交換した。
県からは荒井正吾知事を始め局部長ら計8名、32の市町村長(代理の副市長2名)が出席。冒頭、挨拶に立った荒井知事は「本日は南教授をお招きして公共施設のマネジメントについてお話いただきます。皆様と一緒に学んでいきたい」と語った。続いて県総務部ファシリティマネジメント室長が「公共施設の効率的な管理・運営/公有地の活用・売却」について説明した。
 県及び市町村の公共施設等を取り巻く状況は①高度経済成長期を中心に整備された施設が多く、老朽化が進行②耐震化を含め大規模改修が必要な時期を迎える③人口減少等の社会情勢の変化により低・未利用など資産活用上の課題として文化施設は維持管理費等が高額にも拘らず利用率が低い、教育施設は老朽化とともに少子化で空き施設が増加、庁舎等は耐震性のない施設の改修または更新が必要。そこで限られた財源のなかで今後、一斉に更新・改修の必要があり、土地・建物・設備等の資産全般(ファシリティ)について効率的・効果的な活用と維持管理の徹底が求められ、「ファシリティマネジメントの推進」が必要となる。
 県と市町村は2年度に「個別施設計画」を策定している。これで保有資産全体に係る費用が集約・可視化され、今後のライフサイクルコストが明確になった。各市町村では財政指標や施設データの現状を把握し、公共施設の効率的な管理・運営と公有地の活用・売却の課題に対応することになる。文化施設を例にとり、建築年数での老朽化を縦軸に稼働率での利用ニーズを横軸に、施設のあり方を示した。 県・市町村ともに大幅な投資が今後できないと老朽化は進行、大規模改修・建替の需要がますます増加する。現状のまま何も対策をしないと経年劣化による故障等により身体・生命の危険と施設費用増大による財政破綻を招き、現在の財政状況から考えると、現在の施設のまま維持し続けることは困難で、必要なサービスを維持・向上させていくためには「新たな手法」の検討が必要だとしている。
 公共施設の効率的な管理・運営の実現への手法として▽既存施設の維持管理費の効率化=広域連携(共同利用・共同管理)・包括管理委託▽既存施設の削減=集約・複合化、広域連携(共同運営・共同設置)▽DX(デジタルトランスフォーメーション)による施設面積縮小=行政手続き等に関する申請・交付と講座・相談のオンライン化▽民間活用=民間施設、民間ノウハウ(PFI等)、包括管理委託、リース方式―を挙げている。
 特に共同利用については、各市町村に1つしかない施設を市町村内だけで統廃合・廃止等を検討するのは困難で、市町村の枠を超えた手法としての適正な施設配置(資産の整理・統廃合)を検討すべきだとして、県がサポートする。稼働率が低い施設を廃止して耐用年数超過時に共同設置するようにする。利用のニーズ低い施設で老朽化しているものは廃止・処分、老朽化が進んでいないものは複合化・転用等。
 市町村の公有地は活用予定がなく処分が困難なものが81%、市街化調整区域に位置するものが86%を占めている。市街化調整区域の未利用地の活用・売却例として①既存建物付で売却して民間事業者が「既存建築物の再活用」の要件によって建替して活用②遊水地・調整池として整備―を挙げている。県では活用・売却希望の未利用資産のデータ公開と未利用資産活用・売却検討会(県と市町村で構成)のサポートを3年度に取り組む。国との連携を強化して総合的な有効活用を進めていく。
 ファシリティマネジメント室の説明の後、広陵町の山村町長が中和・西和広域連携検討会の実績や幼稚園跡地の利活用などの取組みの事例を発表。また、南学東洋大学客員教授による「財政問題としての公共施設マネジメント~キーワードは時限爆弾、縮充、因数分解~」の講演を行った。
(吹上)

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