一般記事

全国で指名競争の復活が相次ぐ 地元企業の保護・育成と経済の活性化へ

2022.10.31 その他国交省

談合防止を目的に廃止した指名競争入札が復活させる動きが活発になってきた。
指名競争入札を撤廃して、平成6年度に導入した一般競争入札であるが、最近の状況を見ると入札不調・不落が続出している。
 福島県では、平成18年に発覚した官製談合事件をきっかけに、翌年度に指名競争を撤廃し、全て一般競争に移行した。しかし、入札不調が続出したため20年度に指名競争を復活させたその後、災害対応などの観点から、地域の建設会社に対する保護・育成の機運が次第に高まってきた。福島県では指名競争の中止から10年ほどたった20年度、地元企業の受注割合を高めるため、地域貢献の評価に重点を置く「地域密着型」の総合評価落札方式を導入した。その結果、導入前よりも地元企業が受注できるようになったものの、高い評価を得られる一部の企業に受注が固定化する傾向が表れた。
 そこで県は、地元企業の保護・育成を目的に、令和2年度から一般土木工事や舗装工事など5工種で、「地域の守り手育成型方式」と呼ぶ指名競争の試行を始めた。対象は、土木部と農林水産部が発注する予定価格3000万未満の一部工事だ。県では2ケ年度の入札結果を基に指名競争の効果を分析し、今年9月に開いた入札制度等監視委員会で評価結果を明らかにした。それによると、指名競争では、工事箇所と同じ市町村に拠点を持つ企業が受注した案件の割合は78.7%だった。一般競争の65.2%よりも13.5ポイント高い。指名先の選定基準の一つに「地理的要件」を掲げ、工事箇所に近い企業を優先的に指名している点が影響したとみられる。地元企業の受注割合は指名競争の方が高く、競争性の低下による落札率の上昇はあまり生じていないという。平均落札率は指名競争が95.8%、一般競争が94.8%と大きな差はなかった。県はこれらの結果を踏まえ、指名競争が地元企業の育成につながっていると評価した。
 指名競争と一般競争との間で揺れ動くのは福島県だけではない。平成18年には、福島県に加え和歌山県や宮崎県でも知事が公共工事を巡る不正で逮捕された。これを受けて全国知事会は同年12月、都道府県の発注工事について、原則として指名競争を廃止する指針を発表。多くの自治体が一般競争へかじを切った。
 一方で、リーマン・ショックが発生した平成20年度は、一部の自治体で特例措置として指名競争を復活する動きが目立った。経済対策の補正予算を迅速に執行するため、入札手続き期間が短い指名競争を採用した。その後、一旦は落ち着きを見せたが、地元企業の育成を目的に指名競争を採用する自治体が平成25年度ごろから相次いだ。先行した宮崎県は、25年7月に3000万円未満(対象金額)の一部の工事で指名競争を導入した。他にも、山口県は「地域活力型指名競争」6000万未満(同)と神奈川県の「いのち貢献度指名競争」1億5000万未満(同)で、地元の工事を地元企業が受ける「地産地消」を促す入札方式を導入した。
 指名競争を原則廃止した国土交通省でも、最近は特例ではなくなりつつある。ここ10年ほどは年間100件未満で安定していたが、令和元年度は156件、2年度は477件と急増した。件数を押し上げた一因に、工事発注の迅速化や施工体制の確保などを目的に関東地方整が元年度に導入した「災害復旧推進フレームワークモデル工事」だ。国交省は今年3月、公共工事の入札契約指針を改正してフレームワーク方式を盛り込んだ。今後、指名競争の実施件数はさらに増えそうだ。
 ただ、かつて「不正の温床」と見なされて指名競争を廃止した経緯がある以上、復活させるには不正を防ぐ仕組みが不可欠だ。       
(橋本)

会員登録
一覧に戻る