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官民の「包括連携協定」生き残りへ社会的要請に対応

2022.6.13 その他企業民間

自治体と民間企業の「包括連携協定」がブームのようになっているが、建設会社が当事者となる事例も出てきた。協定の範囲は幅広いが、中核にあるのは地域の脱炭素だ。自治体の課題を解決するパートナーとして、再生可能エネルギー発電施設の開発や省エネサービスの提供を担う。コントラクターからインフラデベロッパーへ、建設会社の変革が始まっている。
多くの自治体が、人口減少による税収減や高齢化に伴う社会保障費の増加、インフラの老朽化、職員数の減少など、様々な課題に直面している。こうした状況下で、自治体と民間企業の包括連携協定が相次いでいる。
官民の包括連携協定では、自治体と民間企業がテーマを限定せずに協議できる機会を設け、地域の課題を共有して解決策を探すのが一般的だ。環境負荷の軽減、観光振興、医療・介護の充実、災害対応など、地域の活性化や安全・安心を目的にしたものが多い。自治体は民間企業のアイデアやその後の事業化を期待し、民間企業はその事業への参画や自らの事業領域拡大を狙って協定を結ぶ。
これまで自治体と包括連携協定を結ぶ民間企業といえば、金融・保険、電力・ガス、生活関連サービス、運輸など、第3次産業の企業が多かった。しかし最近は、建設会社が当事者になる事例も出てきている。
マイクログリッド事業を狙う西松建設は今年4月、福岡県大木町と脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定を結んだ。脱炭素のまちづくりに向けた諸施策の推進、再生可能エネルギー発電設備や省エネ設備の導入・活用、地域レジリエンス(強じん性)向上、地方創生・少子高齢化対策につながる環境と経済の構築などがテーマだ。  
同社はマイクログリッド事業の事業主体となる予定で、今年夏にも立ち上げる特別目的会社(SPC)への出資候補者でもある。こうした事業構想を含め、地域の課題解決に取り組んでいく考えだ。
これまで自治体は、建設会社とのこうした協定に消極的だった。公共事業の発注における「不適切な関係」や「他社排除」と見られることを避けたかったからだ。
地方の建設会社の状況はより深刻だ。最近、お会いした建設会社の幹部は、「自分たちにないノウハウが吸収できるなら、全国区の建設会社とも喜んで協業する」と話していた。逆に言えば、全国区の建設会社にはコーディネーター的役割も期待されているということだ。たとえ地縁のある場所であっても、地元企業との共創を心掛け、地域経済の発展を第一に考えることが、こうした包括連携を成功に導くもうひつのカギとなる。
さらに、まちづくりは何十年と続くテーマだ。建設会社は“建て逃げ”的発想ではなく、地域に根を張って永遠に付き合っていくぐらいの姿勢が重要になる。
自治体が建設会社に求める役割は変わり始めている。建設会社はこうした社会的要請に対応していかないと生き残れない。工事を請け負うだけのコントラクターではなく、地域のまちづくりを積極的に担うインフラデベロッパーを目指す時が来ている。
      (橋本)

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