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近畿地整と県など 第5回大和川流域水害対策協議会 取組み状況等を共有 土地利用対策としての区域指定も 三代川遊水地は工事着手 目安遊水地は用地取得へ

2024.2.6 近畿地方整備局

 近畿地方整備局と奈良県及び大和川特定都市河川流域25市町村等で構成する「大和川流域水害対策協議会」(座長・見坂茂範近畿地方整備局長)はさる31日、第5回協議会をホテルリガーレ春日野(奈良市法蓮町757―2)で開催した。
 大和川流域(奈良県)は、特定都市河川浸水被害対策法改正後の令和3年12月に全国で初めて特定都市河川の指定を受けたのを機に、4年1月に同協議会を設立して第1回協議会を開いた。4年5月には流域水害対策計画を作成し、流域のあらゆる関係者が協働して流域の浸水被害軽減に取り組んでいる。
 今回は「流域治水」の推進に向けて▽流域水害対策計画の実施に係る取組み状況等の共有(見える化)▽水害リスクを踏まえた土地利用対策(区域の指定)について▽雨水貯留浸透施設整備計画の認定について協議した。このなかで遊水地は三代川地区で用地取得を終えて工事着手、目安地区で地元調整を進めて用地取得をめざす―と説明があった。
 また、土地利用対策区域指定では【貯留機能保全区域】河川に隣接する低地など都市浸水の拡大を抑制する効用があると認められるものを知事等が指定することにより氾濫をできるだけ防ぐための対策【浸水被害防止区域】洪水または雨水出水が発生して生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域を知事が指定することにより規制を行って流域治水の計画・体制を強化する施策。
 冒頭、挨拶に立った見坂局長は「1月1日発災した能登半島自身の被災者にお見舞いを申し上げます。昨年6月の豪雨災害では三郷町のJR大和路線が運休する浸水被害を受けました。大和川では総合的な流域対策に全力で取り組んでいるところです。河川整備と雨水貯留のハード面に加え、土地利用対策のソフト面にも取り組んでまいります」と語った。
 続いて山下真奈良県知事が「昭和57年8月の大水害を機に本格的な総合的な治水対策が始まり、特定都市河川の指定を受けて国交省・県と市町村を挙げて取り組んでいる。今後、降雨量は1・1倍、流量は1・2倍になると推計されており、上流域でさまざまな対策を実施することとなる。県では温暖化対策として6年度以降に脱炭素に本腰を入れていく」と挨拶した。
 事務局の大和川河川事務所長が直轄事業の、県河川政策官が県の事業の整備状況を、さらに土地利用対策(区域の指定)と民間の雨水貯留浸透施設整備計画の認定について説明した後、これから事業展開が見込まれる御所市、広陵町、奈良市、桜井市、上牧町が意見を述べ、意見交換した。
 大和川流域水害対策協議会は、気候変動の影響による降雨量の増加や流域の開発に伴う雨水流出量の増加等により浸水被害が著しい大和川流域において、雨水貯留浸透施設等の積極的な推進及び流域の持つ保水・貯留機能の適正な維持、水防災に対応したまちづくりとの連携、住まい方の工夫など総合的な流域対策を効果的かつ円滑な実施を図るため、流域水害対策の作成及び変更に関する協議並びに流域水害対策計画の実施に係る連絡調整を行うことを目的に、特定都市河川浸水被害対策法に基づき設置された協議会。
 問合せ先は大和川流域水害対策協議会事務局の、近畿地方整備局が大和川河川事務所(電話072―971―1381)、奈良県が県土マネジメント部 河川整備課(電話0742―27―7507)と下水道課(電話0742―27―7525)。流域水害対策計画の実施に係る取組み状況等の共有で説明された主な整備状況は次の通り。
 【大和川(国管理区間)における河川事業】
 大和川遊水地整備は5ヵ所。斑鳩町の三代川地区(約10㌶容量約34万立方㍍)は5年度で用地取得が完了見込みで工事着手をめざし、目安地区(約11㌶)は地元調整を進めて用地取得に着手する予定。三宅町唐院地区(約10㌶)は今後実施する。
 実施中の川西町保田地区(約7㌶容量約23万立方㍍)はこれからコンクリート張を行って1年程度で完成する。安堵町窪田地区(約23㌶容量約96万立方㍍)は周囲堤1400㍍のうち約50㍍が完成、7年度の完成を目標に工事を進める。
 このほか大和川では、藤井地区(左岸)の築堤と王寺地区の河道掘削が未着手で、藤井地区の河道掘削と三郷地区(右岸)の築堤を実施中。
 佐保川では、長安寺井堰改築が完了している以外、長安寺~西九条地区の掘削河道、番条・番条北地区の築堤・合流点処理、城井井堰改築、番条北井堰改築、稗田地区・下三橋地区の引堤、大川井堰改築はいずれも未着手の状況。また、啓発活動などについても説明した。
 【県の事業】
 ▽大和川流域における雨水貯留浸透施設等=流域整備計画では貯留対策として県と市町村で約180万立方㍍(最小必要量)の98%を達成している。御所市、生駒市、平群町、高取町、広陵町があらたに「貯める対策」を実施する。
 ▽奈良県平成緊急内水対策事業=100年に1度の大雨に耐える貯留施設等の整備適地として19地区39ヵ所を選定して進めており、3地区4ヵ所が完成し、14地区19ヵ所を事業化して7市町10地区において施工中となっている。(吹上)

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