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安全確保は建設業の基本的責務 「墜落・転落」災害が3割超

2022.2.4 その他

建設業労働災害防止協会(今井雅則会長)では、労働災害の撲滅を目指して建設工事が輻輳する3月を「建設業年度末労働災害防止強調月間」に定めている。会員各社の全国の作業所を対象に「墜落災害の防止」「重機災害防止」などを重点事項として、労働災害防止活動を積極的に展開することとしている。また、新型コロナウイルス感染拡大防止へ建設現場でも最適かつ徹底した対策が求められている。建設現場で発生する労働災害のうち、墜落・転落は約3分の1と最も多く、今年からフルハーネス型の墜落制止用器具が完全原則化された。

[caption id="attachment_40765" align="alignnone" width="300"] 令和2年の労働災害による「死傷災害」「死亡災害」[/caption]

墜落・転落による労働災害の多い建設作業では、高さ5㍍超の箇所では原則として、肩やもも、胸など複数のベルトで全身を支えるフルハーネス型の墜落制止用器具を着用することしていたが、法令改正から3年の猶予期間を経て、フルハーネス型の墜落制止用器具が完全原則化された(既報)。
建設業の労働災害の事故種別を見ると「墜落・転落」災害が3割超を占めて最も多い。フルハーネス着用の義務化が始まるなど高所作業での安全対策は現場の最重要事項だ。足場の作業床に定められた構造要件などはきちんと把握しておきたい。労働災害よる死亡者数は、建設業で圧倒的に多い。厚生労働省の「労働災害発生状況」によると、令和2年の労働災害による死亡者数は全産業の約3分の1を建設業が占め、2番目に多い製造業の2倍近い。安全対策は建設現場の最重要事項だ。   
その中でも建設業の労働災害で特に頻発しているのが「墜落・転落」災害。死傷災害全体の31・8%を占める。さらに死亡災害に限ると、割合が36・8%と上昇。他の事故種別よりも、生じると死亡災害につながりやすく危険性が高いといえる(図2)。
建設現場での墜落・転落を防ぐため今年1月2日からは高さ6・75㎝㍍超の高所作業でフルハーネス型の墜落制止用器具の着用が義務付けられた。令和2年2月に労働安全衛生法施行令や労働安全衛生規則などを改正し、従来の「安全帯」も法令上、「墜落制止用器具」と名称を変えた。
作業床の構造要件には、作業員の墜落を防止するための措置や、物体の落下を防止するための措置も定められている。
 墜落防止の措置は、筋交いや手すり枠、幅木などを設置して満たす。枠組み足場の場合、3種類の方法がある。交差筋交いと高さ15~40cmの下桟を設ける方法、交差筋交いと高さ15cm以上の幅木を設置する方法、手すり枠を使う方法。単管足場など枠組み足場以外の場合には、手すりと中桟で墜落防止措置を取る。手すりを床材から高さ85cm以上の位置に、中桟を高さ35~50cmの位置にそれぞれ設置する(図1)。

[caption id="attachment_40766" align="alignnone" width="111"] 足場に求められる墜落防止措置のイメージ[/caption]

落下防止の措置は、墜落防止とは別に定められている。具体的には、高さ10cm以上の幅木、もしくはメッシュシートや防網などを設置して物体の落下を防ぐ。
 つまり、墜落防止措置として、交差筋交いと高さ15cm以上の幅木を設けていれば、落下防止措置も同時に満たすことになる。墜落防止措置として手すり枠を使った場合には、別に落下防止措置として高さ10cm以上の幅木を設ける。
 手すり枠を使う場合は、高さ10cm以上の幅木を設ける。交差筋交いの場合には、墜落防止措置を兼ねて高さ15cm以上の幅木を設置する。
 組み立てた足場の構造要件の他、足場を組み立てたり解体したりするときの基準も定められている。足場材の緊結や取り外し、受け渡しなどの際には、幅40cm以上の作業床を設置する。吊り足場や張り出し足場、高さ5㍍以上の足場の組み立て・解体などの作業では、作業主任者を選任しなければならない。安全管理を徹底するうえでは、そうした事業者が実施すべき措置も覚えておきたい。
建設作業については、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」で、より低い5㍍超の箇所でもフルハーネス型の着用が推奨されている。作業内容によっては、「安全衛生特別教育」の受講が必要になった。受講しなければならないのは、作業床を設けることが困難な高さ2㍍以上の箇所で、フルハーネス型の器具を着用して作業する場合。
具体的には、高所で作業床を設置できない作業。例えば、柱上や鉄骨上などでの作業が想定される。逆にいえば、フルハーネス型を着用する必要があっても、作業床を設けられる場所での作業ならば、従事する作業員は受講する必要がない。
令和3年度の建設業年度末労働災害防止強調月間を迎えるに当たって「安全はすべてに優先する」という原点に立ち返り、安全意識の徹底を図っていくことが重要だ。

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