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「盛土規制法」5月に施行 管理責任は土地所有者に 厳罰強化
2023.1.26 国交省省庁
令和3年年7月に起こった静岡県熱海市の土石流災害を受け、国は「宅地造成及び特定盛土等規制法」(盛り土規制法)今年5月に施行する。国土交通省と農林水産省は具体的な規制手法や技術的基準を今年度内をめどにまとめる方針。
静岡県熱海市の逢初川では今も、砂防堰堤の設置など応急対策工事が進んでいる。
新法では、盛り土などの崩壊が人家や人命に被害を及ぼし得る区域を、規制区域として都道府県や政令市の首長が指定する。従来の宅地造成等規制法で対象だった宅地造成に伴う盛り土などだけでなく、森林や農地での盛り土、一時的に仮置きする残土のうち規模が大きいものを対象に加えた。さらに、市街地や集落の上流域の盛り土を起点とした土石流災害などを防止する「特定盛土等規制区域」を新たに指定できる。盛り土が崩壊すると近接する保全区域に土砂が流出すると想定される区域や盛り土が崩壊すると土石流となって保全区域に到達すると想定される渓流などの上流域。
また、規制区域で基準値を超える規模の盛り土を造成する場合、行政の許可を得る必要がある。盛り土規制法の施行後、規制区域を指定するための基礎調査が全国で発注される見込みだ。人的被害に発展しかねない盛り土がある区域を抽出。市街地だけでなく、人が日常的に利用する道路や鉄道、公共施設なども保全できるように定める。施行から5年以内の規制区域指定を目指す。調査では、規制区域内にある既存の盛り土の安全性も確認する。対策の必要性の有無や緊急性を個別に判断したうえで、土地の所有者や盛り土の造成事業者に改善命令などを出す。問題がなかった場合でも、行政による経過観察を続ける。
新法では、宅地造成等規制法で定めていた技術的基準を見直して盛り土の安全対策も強化する。特に重視するのが排水工の設置だ。
静岡県が設置した逢初(あいぞめ)川土石流の発生原因調査検証委員会が昨年9月にまとめた最終報告では、土石流の要因となった盛り土は排水対策が不十分で、盛り土底部に滑り面が生じて崩壊に至ったと推察した。
こうした事例などを踏まえ、地下水が流入する恐れがある場所へ盛り土を造成する場合は、水平排水層や暗渠を設けるように規定する。完成後に排水施設は目視できないので、工事中の中間検査で設置状況を確認するよう発注者に求める。
しかし、一連の対策を講じても盛り土が不法に造成されるリスクは残る。そこで新法では盛り土の管理責任が土地所有者にあると明示。そのうえで無許可の盛り土造成や命令違反に対する罰則を強化する。新年度内に公表するガイドラインで不法な盛り土への対処手順や警察との連携方法などを示し、規制の実効性を高める方針だ。