一般記事

県と斑鳩町 まちづくりで基本協定 法隆寺及びJR法隆寺駅周辺 駅南側で都市機能を集積

2021.10.12 県地域デザイン推進局

 奈良県と斑鳩町は、法隆寺及びJR法隆寺駅周辺地区まちづくりについて基本協定を締結した。「宿泊施設・マルシェ」の整備やJR法隆寺駅南側における都市機能の集積化の検討とアクセス道路整備等を盛り込んだ基本構想を策定している。
 奈良県と斑鳩町は、法隆寺及びJR法隆寺駅周辺地区のまちづくりに係る取組みに関して、基本的な連携と協力に関する協定をこのほど締結した。当該地区のまちづくりにおいて県及び斑鳩町が連携・協力して取り組むことにより、持続的発展及び活性化を図ることが目的。平成30年3月に締結したまちづくりに関する包括協定に基づき「法隆寺及びJR法隆寺駅周辺地区まちづくり基本構想」をまとめている。
 このなかに建設関係では法隆寺周辺における「宿泊施設・マルシェ」の整備やJR法隆寺駅南側における都市機能の集積化の検討とJR法隆寺駅までのアクセス道路整備等を盛り込んでいる。担当は県が県土マネジメント部地域デザイン推進局まちづくり連携推進課市町村連携推進係(電話0742―27―5433)、町が都市建設部都市創生課(電話0745―74―1001内線295)。
 まちづくりの目標は『賑わいのある感幸まちづくり~幸せを感じられる和のまち~』とし、まちづくりの方針として①楽しく巡れる「まちあるき」の推進と選ばれる観光地づくり②観光関連団体との連携による戦略的観光コンテンツの造成と満足度の高い観光地づくり③「来て良し、居て良し」の快適なまちづくりと持続可能な観光地づくり④官民連携による拠点整備と暮らしやすい地域づくり―を設定している。
 斑鳩町には、世界文化遺産である法隆寺・法起寺を始め、その始まりを飛鳥時代に持つ多くの社寺があり、その営みは1400年に亘り続いてきた。第5次斑鳩町総合計画では『「和」で紡ぎ未来へ歩む私たちの斑鳩』をまちの将来像(まちづくりのテーマ)に掲げ、住民一人ひとりが多様な価値観を尊重しながら世代を超えて支え合い、未来へ歩んでいくまちをめざしており、斑鳩町独自の魅力である豊富な歴史的・文化的資源や自然環境が一体となった町並みを今後とも守り・継承していく必要がある。
斑鳩町では、歴史的風致を後世に継承していくため「斑鳩町歴史的風致維持向上計画」を策定し、平成26年2月に県下の市町村で初めて国の認定を受けた。このなかでは、法隆寺周辺を重点区域として歴史的な町並みに調和した建物などの修景整備や文化財の保存・整備などを行い、今後、これらの地域や景観を「散策・回遊型」のまちなか観光へ繋げ、まちの賑わいを創出し、地域経済への波及効果を高めることをめざしている。
こういった取組みを推進するためこれまで観光を軸とした取組みを進めているものの、法隆寺だけ拝観して帰ってしまう「点」型の観光となっており、町が持つ豊富な歴史的・文化的資源や自然環境と一体となった町並みなどの観光資源を行政・民間などが連携して充分に活用していくことが求められている。
斑鳩町は近年、人口減少や少子高齢化が進んでいるなか、住民の住みやすさの評価は約8割と高く「今後も住み続けたい」と思っている人の割合も約8割と高い一方で、「買物など日常生活が不便である」と思っている人が約4割占めており、生活の利便性向上による定住促進が求められている。
以上の背景を踏まえて町では、歴史文化による観光振興と暮らし環境の向上による定住促進を推進することを目的として『法隆寺及びJR法隆寺駅周辺地区』を対象としたまちづくり基本構想を策定したもの。まちづくりの方針における基本となる取組みは次の通り。
【楽しく巡れる「まちあるき」の推進と選ばれる観光地づくり】
歴史資源以外の新たな魅力創造による『集客力の増強と滞在時間を伸ばすこと』による経済波及効果の拡大、集客力のある店舗の出店促進、斑鳩ブランドの取扱店舗の拡充による知名度と消費額の向上を図る。
基本となる取組みは①法隆寺周辺における「宿泊施設・マルシェ」の整備(短期)②官民連携による魅力ある店舗の誘致(中期)③斑鳩ブランドのPRと販路拡大(認定数増加や新たな商品開発)(中期)④歴史資源等を活用した体験プログラムの拡充(短期)⑤宿泊者向け特別体験企画の開催(短期)⑥斑鳩町と連携協定締結団体の連携による魅力UPイベントやセミナー等の開催(短期)。
【観光関連団体との連携による戦略的観光コンテンツの造成と満足度の高い観光地づくり】
個人旅行へのシフトチェンジに伴うバスを利用した周辺地域との繋がりや相互移動の連動コンテンツの充実、法隆寺から町内の回遊や奈良や明日香などの周辺地域に周遊できる二次交通手段の充実、広域的目線による組織構築と事業推進。
基本となる取組みは①奈良交通やJR等と連携して広域周遊を目的とした観光商品造成(長期)②県内への「誘客」から県内「送客」に資する旅行商品の造成(短期)③WESTNARA広域観光推進協議会(大和郡山市、王寺町、生駒郡)の設立と推進(短期)④斑鳩町から奈良や明日香など周辺地域への二次交通の充実(中期)。
【「来て良し、居て良し」の快適なまちづくりと持続可能な観光地づくり】
民間建築物を含めた一体的な歴史的まちづくりの推進、公共施設の修景整備による歴史的まちづくりの推進、JR法隆寺駅及び駅から法隆寺周辺へのルート上における観光客に対する雰囲気の演出。
基本となる取組みは①民間建造物の修景整備に対する助成(短期)②JR法隆寺駅から法隆寺までの観光案内看板整備、観光ルートの演出、歩行空間の充実(中期・長期)。
【官民連携による拠点整備と暮らしやすい地域づくり】
駅周辺の都市機能集積や生活利便施設の検討、斑鳩町の玄関口としての商店街の賑わい向上、自動車でのアクセス性向上及び歩行者と自転車での利便性と安全性の向上。
基本となる取組みは①町有地を活用したチャレンジショップの整備(短期)②JR法隆寺駅南側における都市機能の集積化の検討(長期)③JR法隆寺駅までのアクセス道路整備④JR法隆寺駅北口商店街の活性化⑤一級河川「三代川」の改修。
まちづくりを推進するための方針は▽時間軸を踏まえた事業の推進=まちづくりの実現のために掲げられた事業は、それぞれ事業規模や事業期間、取組みの熟度などが異なるもので構成されている。従って時間軸を踏まえて事業実施時期などを見定めるとともに、事業の優先度も考慮してまちづくりを推進する▽シビックプライドを醸成するまちづくり=まちづくりの実現に当たっては地元住民を始めとした町民の協力が必要不可欠となっている。この地区のまちづくりを機会としてまちへの「誇り」「愛着」「共感」が図られ、シビックプライドが醸成するまちづくりを推進する。
基本構想の対象となる地区は、法隆寺を中心とする歴史・文化・観光施設が点在する法隆寺を中心としつつ、県道大和高田・斑鳩線と天理・斑鳩線や国道25号及び駅前商店街といったJR法隆寺駅から法隆寺までを繋ぐエリアと、法隆寺インターチェンジからJR法隆寺駅を繋ぐ生活利便性の向上を見込むエリアを1つのエリアとし、これらを一体的とした地区としてまちづくりを進めていく。
土地利用について県道や国道沿いに商業用地が見られるものの、市街化区域内は住宅用地が多くを占めており、JR法隆寺駅前や旧来からの商店街についても住宅用地で占められていることから、観光の玄関口としての雰囲気が乏しく空き店舗も多い状況となっている。また、市街化区域と市街化調整区域に跨るJR法隆寺駅南側には田が広がっており、駅前の好立地が活かされていない―としている。建物の立地状況では県道や国道沿いには商業施設が見られるものの、ほとんどが戸建住宅や共同住宅・店舗併用住宅となっている。また、大規模小売店舗の施設立地は見られない。
道路の状況は県道や国道では8㍍または12㍍以上の幅員の広い道路が整備されている。一方で、JR法隆寺駅周辺では6㍍未満や4㍍未満の道路が多く存在し、幅員が狭いため車の対面がし難い箇所や歩道が整備されていない箇所などが多く存在する。
観光では、歴史・文化・観光施設が点在しているが、法隆寺における観光地・イベントの魅力度や来訪意向が最も高い一方で、法隆寺以外の認知や魅力度が低い。観光モニター調査における法隆寺のみの訪問割合は約40%と高く町内周辺への観光等に費やす滞在時間が限定的となっている。宿泊よりも日帰りが多くを占めており、宿泊地においては約60%が県内となっている。これまで町内には宿泊施設がほとんどなかったが、令和元年度に参道沿いにホテルが開業し、また、一棟貸しの民泊が新設されるなど少しずつ宿泊施設の整備が進められている。
地区の課題を次のように分析して基本構想をまとめている。
▽いかるがの魅力や集客の向上=①観光客の観光ルートが法隆寺等の歴史的資源だけを訪れる拠点通過型観光となっている②観光客の滞在時間が短い③集客力のある店舗が少ない④斑鳩ブランドに対する知名度が低い。
▽観光スタイルへの対応=①旅行客の観光スタイルは個人旅行が主流となっている②町単独での観光戦略や観光施策の展開が多い。
▽回遊性の向上とまちなみの保全・活用=①法隆寺周辺の歴史的な街並みが消失しつつある②JR法隆寺駅において観光の玄関口としての雰囲気が感じられない。
▽生活利便性の向上=①JR法隆寺駅は町内の主要駅であり、駅周辺に都市機能や生活利便施設のニーズがある②法隆寺駅北口商店街は通勤通学時間帯以外は買い物客が少なく空店舗も多いことから、閑散としている③JR法隆寺駅周辺の道路は幅員が狭く歩道が整備されていない箇所も多い。

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