民間情報

「CCUS導入しない」が4割 建設業振興基金

2021.6.11 カテゴリ2(民間情報)

国土交通省が推進する建設業の働き方改革が中小建設会社に浸透していない実態が、全国中小建設業協会(全中建)の調査で浮き彫りとなった。中でも、技能者の処遇を改善して担い手不足の解消を図る建設キャリアアップシステム(CCUS)への不満は根強い。導入しないと答えた会社が全体の4割を占める。
CCUSは、建設業振興基金が平成31年4月に本格運用を開始した。令和3年5月31日現在、技能者登録数は57万920人、事業者登録数は11万1925社で、前年度末までの目標登録数100万人の約57㌫である。
全中建が傘下団体の会員企業2260社を対象に、昨年10~12月にアンケートを実施。働き方改革への対応などを尋ね、696社から回答を得た。その中で、CCUSについては「導入済み」が23.4㌫と前年の調査から倍増したものの、「導入しない」が39.8㌫と最も多い。
導入しない最大の理由は「費用負担ができない」が48.8㌫に上る。ある専門工事会社は、従業員が技能労働と管理業務を兼任し、1日に複数の現場に出入りする。元請けとして受注するときもある。管理が複雑になるため導入が難しいと訴える。
別の会社は、小規模な工事では1人の作業員が複数の職種を兼務するため、登録に必要な工種設定ができないと困惑する。山間部の小規模な工事では、現場事務所を設置できず、ネットワーク環境を整えられないケースがあるという。
「CCUSのシステム設計者は、地方の中小建設業への理解が足りない。土木一式の現場では、会社も技能者も負担増にしかならない」といった批判もある。2割は「発注者のシステム不知」を導入しない理由に挙げ、制度を疑問視する向きも強い。その他、「建設業の離職防止に効果があると思えない。地方の会社へのメリットが分からない」「費用対効果を期待できない」といった厳しい見方が多い。効果やメリットを見いだせない中、「システムが必須となるまで様子を見る」など、導入に二の足を踏む会社が続出している。
背景には、「地方では導入の機運が高まっていない」といった事情がある。市町村では制度を理解していない発注担当者が珍しくない。
全国で最も多い技能者登録数の都道府県は、東京都の6万2442人、次いで神奈川、埼玉、大阪府の順で、奈良県は3507人の全国40位。東京、神奈川、大阪3都府県の建設許可業者数は、全体の約23%に対し、CCUSの登録者数は約33%と大都市圏への偏りが大きいことが分かる。
こうした状況を受けて、地方の自治体も独自のテコ入れ策を講じるところもあり、登録のインセンティブを強化する検討を進めている。
建設業が将来にわたって、その重要な役割を果たしていくためには、現場を担う技能労働者の高齢化や若者の減少といった構造的な課題への対応を一層推進し、建設業を支える優秀な担い手を確保・育成していく必要がある。そのためには、個々の技能者が、その有する技能と経験に応じた適正な評価や処遇を受けられる環境を整備することが不可欠である。

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