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下水道マネジメント課 1月12日までパブコメ 流域下水道事業「経営戦略」改定案 下水汚泥肥料利用の検討 ウォーターPPPの導入
2025.12.19 県土マネジメント部
奈良県県土マネジメント部下水道マネジメント課は、「奈良県流域下水道経営計画」の改定(案)を公表し、意見募集(パブリックコメント)を実施する。案には、下水道事業の継続ため老朽化対策のほか、耐震化対策・耐水化対策、下水道資源の有効活用(下水汚泥の肥料利用の実現化可能性検討)、ウォーターPPPの導入、広域化・共同化の推進に取り組むとしている。
案は下水道マネジメント課のHPに掲載しているほか、県政情報センター(県庁舎東棟1階)・県民お役立ち情報コーナー(県立図書情報館、県産業会館、橿原総合庁舎、吉野町中央公民館の県内4か所)・ 下水道マネジメント課(県分庁舎5階)でも閲覧できる。意見を令和8年1月12日まで郵送・FAX・HP掲載のメール送信フォームにより受け付ける。問い合わせ先は総務経営係(電話0742―27―7524)。
県では、将来に亘って安定的に下水道事業を継続していくための中長期的な基本計画である「奈良県流域下水道事業経営計画」を3年3月に策定した。7年度末には前回策定から5年を迎えることから、策定した経営計画に沿った取組み等の状況を踏まえつつ、中長期的な視点から経営基盤の強化に取り組むことを目的に8年度~17年度の10年間を計画期間として、経営計画の改定を進めている。8年1月にパプリックコメント終了・結果集約、2月に建設委員会報告(パブリックコメント後)、3月に経営計画公表の予定。
県の流域下水道事業における経営の安定化及び持続的な下水道サービスの実現のため、総務省から要請されている投資・財政計画を含む「経営戦略」を令和7年度内に改定する。
一般競争入札「奈良県流域下水道事業における経営戦略改定支援業務」により税理士法人森田会計事務所(奈良市油阪町456番地第2森田ビル)に委託して進めている。委託期間8年3月25日。
今回の改定の趣旨は公営企業の中長期的な経営の基本計画である「経営戦略」を企業ごとに策定し、それに基づく計画的かつ合理的な経営を行うこと、7年度までに3年~5年内の見直しを行うこと。
奈良県流域下水道事業の現状は▽下水道事業では県内の住民・事業所などから排出された下水がまず市町村の管理する管路に流入し、その後県の管理する幹線管路を経て県処理場で処理されており、流域下水道事業として県・市町村が一体となって汚水処理を担っている▽奈良県では昭和40年代から下水道事業に着手→流入水量は順次に増加。下水道普及率は令和6年度末現在83・8%まで向上。
奈良県流域下水道事業の課題は▽将来の人口減少に伴い、今後流入水量も減少し、下水道事業の運営に必要な負担金収入も減少する見込み▽下水道の普及促進のために実施した投資額は約3500億円であり、既存施設の老朽化に伴い今後の更新需要の増大が見込まれること。
今回の改定内容は、投資・財政計画では前回計画期間3年度~12年度で策定の投資・財政計画について光熱水費等の物価上昇や単価改定等を反映して今回計画期間8年度~17年度の持続可能な経営の実現をめざす、経営の基本方針では経営の安定化のために老朽化対策と耐震化対策と耐水化対策及び広域化・共同化等の取組みを引き続き推進する。
経営計画に記載の主な取組み内容は①下水道施設の健全な運転維持に向けた対策の推進として施設ごとのリスク評価を実施したうえでの投資費用の平準化等②官民連携による下水道事業の効果的・効率的運営ウォーターPPPの導入と下水道資源の有効活用の推進等③持続可能な運営に向けた下水道経営の基盤強化として県や市町村が運営する汚水処理事業の広域化・共同化等。
経常収支比率は当該年度において維持管理負担金収入等の収益で、処理場の維持管理費等の費用をどの程度賄えているかを表す指標。経営計画の計画期間である今後10年間においては人口減少による有収水量の減や物価上昇による営業費用の増等により経常収支比率の低下が見込まれ、16年度には100%を下回る見込み。
営業収益に対する累積欠損金の状況を表す指標の累積欠損金比率は経営計画の計画期間である今後10年間においては0%を見込み、短期的な債務に対する支払能力を表す指標流動比率は経営計画の計画期間である今後10年間においては100%以上を見込んでおり、いずれも適正な値となっている。
維持管理負担金収入に対する企業債残高の割合で企業債残高の規模を表す指標の企業債残高対事業規模比率は起債残高の増加が見込まれているが、適切な老朽化資産への更新投資を実施していくとともに国に対して国庫補助金の増額等による財政支援を要望していく。
以上の指標分析では今後、人口減少に伴う収入の減少や物価・人件費の高騰に伴う費用の増加と保有する施設の老朽化に伴う更新費用の増加といった下水道の経営環境は厳しさを増していく。投資・財政計画では、社会情勢の変化に伴って短期的には黒字であるものの、年々黒字の幅が縮小していき、赤字に転落することが見込まれる。そこで収支バランスを改善し、将来に亘り安定的に下水道事業を継続していくために、以下の取組みや維持管理負担金単価の改定の検討を進めていく。なお、毎年度の決算ごとに改めて投資・財政計画を更新のうえで関係市町村との勉強会等にて検討するなど市町村と協議していく。
【下水道施設の健全な運転維持に向けた対策の推進】
▽老朽化対策=施設毎のリスク評価を実施したうえで改築対象の優先度を設定し、将来的な事業量及び投資額の平準化を図る計画(ストックマネジメント計画)を策定して事業を実施①管路施設、機械設備は点検・調査の結果を踏まえて修繕長寿命化または更新②迅速で効率的な点検・調査をめざしてメンテナンスDX技術を導入③電気設備は劣化の把握が困難なため目標耐用年数経過時点で更新④埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け実施した「全国特別重点調査」の結果、修繕・更新が必要とされた管路施設についても優先順位を設定して計画的に対策を実施。
▽耐震化対策・耐水化対策=災害に強く持続可能な下水道システムの構築をめざして耐震化・耐水化についての対策を実施①耐水化はシミュレーションの結果、浸水が懸念される3処理場と3ポンプ場の受変電設備やポンプ設備等を優先して耐水化を実施②耐震化は上下水道耐震化計画(7年度~11年度)に基づき、まず避難所等からの汚水を処理場まで排水できるように管路と揚水機能(ポンプ場)の耐震化を優先して実施。
【官民連携による下水道事業の効果的・効率的運営】
▽下水道資源の有効活用=第二浄化センターにおいて汚泥消化タンクの設置により、下水汚泥の減量化・消化ガス発電等の導入を検討。また、経済性と地域農業への貢献及び温室効果ガス削減効果等を考慮し、下水汚泥の肥料利用の実現化可能性も検討。
▽ウォーターPPPの導入=第二浄化センターを含む第二処理区において10年度からの事業開始を目標にウォーターPPP(更新支援型)の導入を検討。導入により管理・更新の一体マネジメントが可能となり、施設管理の最適化や費用縮減等による経営の安定化が期待される。
【持続可能な運営に向けた下水道経営の基盤強化】
▽広域化・共同化の推進=県や市町村が運営する汚水処理事業について持続可能な事業運営を確保するために、5年3月に「奈良県汚水処理事業広域化・共同化計画」を策定。この計画に基づいて広域化・共同化の取組みを推進。主な取組み内容は単独公共下水道処理場の統廃合、し尿2次処理水の受入れ、下水道事業のデジタル化推進等。
