一般記事
段階的施工を検討 一級河川能登川河川改修事業 L60㍍の区間で河川予備設計
2025.7.8 県奈良土木事務所
奈良県奈良土木事務所は、河川整備計画に基づき河川改修を行っている一級河川能登川が、用地交渉や地下埋設物の移設に伴う事業者との調整等が難航し、当面は事業の進捗が望めない状況となっていることから、少しでも治水安全度を向上させるために難航箇所より上流の未改修区間におけるボトルネック箇所を抽出し、流下能力を考慮しつつ段階的な施工に起因して洪水被害が発生しないよう配慮して、令和7年度にその箇所の改修を先行して整備する段階的な施工を計画する。
一般競争入札「一級河川能登川段階的施工計画検討業務委託(特定都市河川浸水被害対策推進事業(河川改修)他)第繰1―2―委―3他号」を7月17日に開札して業務を委託する。業務場所は奈良市南京終町。委託期間8年3月19日。予定価格2190万1000円込、調査基準価格1757万8000円込。県庁の担当は県土マネジメント部河川整備課河川整備係 (電話0742―27―7507)。
大和川水系(平城圏域)の能登川は、河川整備計画に位置付けられて河川改修を行っている。計画区間の奈良市南京終町の京終橋~JR桜井線約700㍍は未改修の状態。5年度の県河川整備委員会において「事業継続が妥当」との事務局案を了承している。残事業費11億8000万円(建設費10億7000万円、維持管理費1億1000万円)。
未整備区間は交通量が多い道路や宅地が隣接し、地下埋設管が多く埋設されている区間を流れている。地元との用地交渉等を継続的に行った結果、用地を広げることなく施工を行うことができる矢板護岸工の設計を進めている。
6年には「一級河川能登川橋梁詳細設計業務委託(特定都市河川浸水被害対策推進事業(河川改修))第1―2―委―3号」を日建技術コンサルタント奈良事務所に委託して実施。まず先行して護岸工事に着手、その後の渇水期に橋梁工事を始めることになる見通し。架替が必要となる恵比須橋については、周辺に重要なインフラ設備が多くあり、架替時にはインフラ設備の休止・移設が必要となるため、設置位置等の調整・検討に時間を要している。5年度は橋梁・護岸の設計とともに地下埋設業者との協議を継続して行った。当面(今後5年)の目標は今年度と来年度でNTTや大阪ガスとの協定書締結に向けた協議を完了し、恵比須橋まで矢板護岸工の整備を進める。
また、4年度~5年度に「一級河川能登川護岸詳細設計業務委託(防災・安全社会資本整備交付金事業(広域河川)(加速化対策分)第繰補1―1―委―1号」を中央復建コンサルタンツ奈良営業所で、5年度に「一級河川能登川井堰詳細設計業務委託(特定都市河川浸水被害対策推進事業(河川改修)(加速化対策分)(国補正)他)第繰補1―2―委―2他号」を大日コンサルタント奈良事務所で実施している。
現在は日本工営に委託して改修事業のうち未改修となっている京終橋上流の191㍍を対象に令和7年に最適な施工計画案を策定するとともに、発注ロットごとに仮設工や既設護岸への擦付等を検討し、図面・数量をとりまとめている。今回の業務内容は次の通り。
【流下能力の把握】
河道計画の検討に係る水位計算は基本的に一次元で不等流計算を用いることとし、対象区間は未改修区間(図参照)。複断面河道(低水路流れと高水敷流れの相互干渉による抵抗の増加)や樹木群の影響等を無視できない河道では準二次元不等
流計算を用いる。
▽断面図データの作成=貸与する横断図等から不等流計算を実施するための断面データを作成する。
▽粗度係数の設定=河床状況と河道内の植生繁茂状況を踏まえて既往知見より粗度係数を設定する。
▽計画条件の設定=既住の治水計画等を参考に下流端水位と計算流量ケースなど不等流計算の条件を設定する。
▽流下能力算定=断面毎の流量(Q)と計算水位(H)の関係からH―Q式を作成する。断面ごとにH―Q式に評価高を適用し、流下能力を算定する(現況の確率降雨規模の算定を含む)。算定後に河道のネック箇所や全河川的な治水安全度バランスを把握するため流下能力図を作成する。なお、№29~№39L200㍍の区間においては過去の検討で現況流下能力が10年確率の計画高水流量(35立方㍍/S)を満足しているため、改修は不要と判断しているが、今回の算定結果に基づいて改めて検証する。
▽既設護岸の調査及び補修設計=改修不要区間において既設護岸(自然護岸も含む)の状況が治水安全上問題ないか調査し、補修が必要な箇所については補修設計を行う。
【河川予備設計】
№26~№29L60㍍の区間における河川予備設計を実施する。検討に当たっては前項の流下能力検討結果を踏まえ、№26より下流側の既往の成果との整合を考慮したうえで、大和川水系河川整備計画(平城圏域)に基いて1/10年降雨に対応する河道計画を策定する。具体的には適した平面形状(計画中心線)及び縦断・横断形状を設定する。横断形状を検討する際は護岸型式についても検討する。設定された河道計画において等流・不等流計算による水理検討を実施し、充分な治水安全度を有しているかの検証を行う。また、効果的かつ効率的な改修計画断面の設定を行う。
【段階的施工計画】
対象河川は既往設計において河川整備計画に基づき計画規模1/10で計画されている。しかし、難航箇所があり当面の事業進捗が望めない状況であることを踏まえ、前項の現況流下能力(現況の確率降雨規模)を考慮し、中間の整備目標(計画規模)を設定する。
この中間の整備目標に基づき、既往設計及び本設計内容を踏襲した段階施工を計画する。なお、計画に当たっては段階施工時の工作物は可能な限り手戻りが少なくなるよう検討する①設計計画②現地踏査③基本事項の検討④段階施工の計画検討⑤段階施工における各段階の流下能力の算定⑥照査⑦報告書作成。