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奈良国道 路盤含む修繕で長寿命化 舗装などの「修繕対策」を作成 国道4路線150㌔㍍が対象 名阪国道で多機能型排水性舗装
2025.2.4 近畿地方整備局
近畿地方整備局奈良国道事務所は、管理する国道の舗装などの「修繕対策」をまとめた。路盤も含めた舗装修繕による長寿命化対策や名阪国道における多機能型排水性舗装の推進などが盛り込まれている。
奈良国道事務所は、国道24号、25号、163号、165号の4路線(管理実延長約150㌔㍍)の維持修繕事業及び交通安全対策事業等を実施している。維持修繕事業では、舗装の健全性を診断する舗装点検を行っており、車道舗装の損傷状態を3つの指標①ひび割れ②わだち掘れ(車両が通過する位置に連続的に生じる縦断方向のへこみ)③IRI(車で走行した時に感じる進行方向の凹凸による車の乗り心地)で総合的に判断している。
【舗装の耐久性の向上~舗装を長持ちさせる~】
表層にひび割れが発生すると、そこから雨水が浸透して路盤の支持力が低下する。さらにひび割れから路盤の成分が流出することにより劣化していく。雨水の浸透が路盤まで達して路盤が乱されている場合には、舗装の耐久性は低下していると考えられるため表層だけではなく路盤を時には路床を含めた修繕を行うことが重要となる。
国土交通省の調べでは、大型車交通量1000台/日・方向以上の路線は舗装が早期に損傷し、1000台/日・方向未満では損傷の進行が緩やかになるとされている。
これまでの修繕方法は、毎年限られた予算の中で多くの路面を修繕するために主に舗装の表層の修繕を実施していた。そのため舗装が早期に損傷する状況も見られた。
そこで、これからの取組みは、長寿命化対策の1つとして表層だけではなく路盤も含めた修繕を実施することで舗装の耐久性を向上させる他、ひび割れ抵抗性が高くてひび割れ伝播速度が非常に遅く、これまでの改質Ⅱ型舗装と同程度のわだち掘れ抵抗性及び施工性を有する長寿命化舗装用バインダを採用するなど、耐久性が高い新技術を適材適所で活用することで補修回数の低減を図っていく。
【区画線の維持修繕~見やすい区画線に~】
区画線は、車両の走行位置を運転者に通知する他、車線維持支援制御装置LKAS(LaneKeepingAssistantSystem)を有する車両の走行にも不可欠な施設。しかし、経年劣化により区画線の剥離が進行すると車線逸脱の危険性が高まるため適切な維持管理が求められる。
これまでの取組みは、維持管理業者のパトロールでの目視確認や利用者からの電話通報により補修箇所を選定し、補修を実施していた。
新たな取組みは、令和6年度から日常の車両でのパトロールにおいて車内からドライブレコーダーで路面の撮影を行い、AIにより区画線を自動認識し、摩耗率を専用ソフトで解析するとともに、地域特性を踏まえて補修箇所を選定して補修していく。また、道路の異常等を発見した場合に直接道路管理者へ通報することができる「道路緊急ダイヤル(#9910)」が、6年3月から全国の道路を対象にLINEアプリからも通報が可能になった。これにより聴覚や発話に障がいがあり、音声による通報が困難な人方からも通報が可能となった。
【道路維持管理のDX】
道路管理者は、平成26年の道路法改正等を受け、5年に一度の橋梁・トンネル・道路附属物などの点検を行うとともに、道路を良好な状態に保ち安全な交通を確保するため道路の異常や損傷等を早期に発見するためのパトロールも実施している(表参照)。①これまでの取組み②新たな取組み。
▽異常を効率的に見つける=①各道路管理者は近接目視により把握するか、または近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法により把握するものとし、令和4年度からは橋梁とトンネルの定期点検において、5年度からは舗装の定期点検において、点検支援技術の活用の原則化により定期点検の高度化と効率化を進めてきた②道路管理者の技術力向上と、国においては活用の原則化が図られている点検支援技術など新技術活用の推進を自治体にも普及させていくため、毎年奈良県道路メンテナンス会議を通して新技術のデモンストレーションを行っている。5年度は奈良市と五條市で効率的な橋梁点検に向けた2つの新技術デモンストレーションを行った。これらの新技術を活用することにより作業日数や経費の削減、交通規制が軽減または不要になるため社会的影響の低減にも繋がる。
▽メンテナンスの効率化=①道路パトロールや定期的な点検において目視により路面性状などの状況を把握し、適切に補修など維持管理に努めている。道路の異常などについて電話通報を受けた場合に場所の特定や状況の把握が難しく時間を要することが多くあった。また、道路パトロールではすべての管理道路の状況を把握することは困難だった②デジタル道路地図等を基盤として各種データを紐付けるデータプラットフォーム(xROAD)の構築を進めている。舗装の定期点検結果はxROADの中で道路施設点検データベースに収められ、直轄道路の点検結果は公開されている。また、xROADではベースレジストリの1つとして大縮尺地図の道路基盤地図や道路台帳附図についても公開予定。今後、これらのデータを用いた次世代の舗装マネジメントを実現していく。奈良国道事務所では路面性状調査に道路管理画像を用いた路面
評価システムを採用し、舗装の損傷及び変状を早期に発見するため効率的な舗装点検に取り組んでいる。
【名阪国道における交通事故対策の取組み~安全性の向上~】
名阪国道は奈良県北部を東西に横断して大阪と名古屋を最短距離で結び、西名阪と東名阪の両自動車道に接続して名神高速道路の代替機能を持つ自動車専用道路。奈良県内は平坦な大和平野から山岳部を一気に登り、大和高原を横断する。特に天理IC~福住ICの区間は414㍍の高低差を克服するため急カーブが続き、特にΩカーブ区間の死傷事故率(区間の年間死傷事故件数を区間距離×区間の年間交通量で除したもの)は全国主要高速道路平均と比較して上りで約4倍、下りは約5倍となっている。
これまでの交通事故対策は、平成15年度に事故対策と既往施策を基に、名阪国道が持つべき機能を最大限発揮するため策定した施策『名阪国道スマートアップ計画』に取り組んでおり、上下線ともに死傷事故率は一定減少傾向にある。
これからの交通事故対策(さらなる安全対策)は、多機能型排水性舗装(縦溝粗面型ハイブリッド舗装)が舗装表面の縦溝により従来の排水性舗装よりも長期に亘って路面排水性機能を確保した舗装であり「すべり抵抗」や「運転手の視認性」が向上することから、平成26年度から事故多発箇所のΩカーブ区間で採用している。