一般記事

県文化財課 7年度にかけ基本設計 興福寺旧境内登大路瓦窯跡

2024.9.27 県文化・教育・くらし創造部

 奈良県地域創造部文化財課は、「興福寺旧境内登大路瓦窯跡」について、奈良時代の大寺院を飾った瓦の生産地の顕在化によって当時の姿に思いを馳せる文化空間の創出を目的に、令和7年度にかけて関連する事業の基本設計及びそのために必要な水位測定及びデータ解析等を実施することとする。
 一般競争入札「登大路瓦窯跡における水位測定及びデータ解析・基本設計業務6文財第15号」を10月15日に開札して業務を委託する。業務場所は奈良市登大路町(史跡興福寺旧境内登大路瓦窯跡)。委託期間8年3月13日。予定価格1643万5100円込、最低制限価格1305万7000円込。
 奈良時代以来の瓦窯跡としての史跡の本質的な価値を伝えるための整備方針は①奈良時代以来の瓦生産遺跡の顕在化②残存する奈良時代の瓦窯跡の時を超えた臨場感ある展示③周辺施設と調和した空間の形成―など。
登大路瓦窯跡は、奈良市登大路町の興福寺旧境内に含まれ、現在県立美術館北側の県有地内に所在。発掘調査により計12基の窯跡が検出され、操業開始時期は奈良時代後半(12基のうち3基)と考えられ、概ね鎌倉時代初頭まで操業されていたことが明らかとなった。文献史料に見られず、発掘調査により確認された奈良時代の窯で、奈良時代後半以降の興福寺伽藍の維持管理を支えた瓦窯であるという歴史的意義を鑑みて、日本古代の窯業史を検討するうえで非常に重要な瓦窯跡と評価できる。
登大路瓦窯跡は発掘調査後、現地に埋設保存されており、今後の史跡整備として露出展示を始めレプリカ展示、何らかの地表面表示などを検討。また、隣接する県立美術館と一体となった整備も検討を行った。4年3月に法相宗大本山興福寺により策定された「史跡興福寺旧境内保存活用計画」を踏まえ、 これまでの発掘調査・史料調査等の成果と保存活用計画策定者の興福寺の意向のほか、県が設置した「史跡登大路瓦窯跡整備検討委員会」における議論等を反映させて登大路瓦窯跡整備基本計画を策定した。
空間文化開発機構(大阪市中央区大手前1丁目)に委託して昨年度に策定した史跡興福寺旧境内登大路瓦窯跡整備基本計画(案)に対するパブリックコメントを今年4月に実施している。担当は記念物・埋蔵文化財係(電話0742―27―9866)。基本計画における整備スケジュールでは、6年度に環境調査7年度にかけて基本設計、8年度に実施設計を行って9年度整備工事に着手することを予定している。今回の業務の内容は次の通り。
▽地下水位の測定とモニタリング=水位観測箇所1ヵ所)掘削深度4㍍を限度とする)。3季に渡り10ヵ月以上水位測定を行い、モニタリングを実施して報告書としてまとめる。
▽遺構の表現手法についての検討=想定される遺構等の表現方法等は窯Eが復元展示、窯Fが遺構露出展示、窯Iが平面表示。水位調査の結果、想定保存方法が遺構等の表現方法として手法内容・遺構の保存・理解度・維持管理・経済性等の点から不適切である場合は、その理由を付して県と協議し、県が委員会に諮るのを支援する。
▽造成及び雨水排水における基本設計=敷地の造成に当たって基本的には現在の緩やかに北西方向に傾斜する地形(3%程度)に合わせて造成レベルを設定する。整備レベルは隣接する西側及び北側の道路及び史跡と接する美術館再整備予定地の南側・西側の土地に摺り付くよう整備する。また、敷地周縁部等に排水構を設置して北側排水路へ接続する。雨水排水の排水路は地形の高低差が大きくないことから開渠を基本とする。
▽覆屋・ベンチ・四阿の基本設計=計画地で導入する整備施設(覆屋・ベンチ・四阿)は周辺景観に調和した色彩や素材とする。特に計画地は史跡興福寺旧境内であることから旧境内の一画を成す地として歴史的景観の形成にも配慮する。覆屋・四阿の設計は関係法令を遵守してできるだけ耐久性の高い材料の仕様とする。ベンチも耐久性の高い材料により維持管理ができるだけ容易となるよう設計に配慮する。また、計画地内において修景や緑陰のために植栽を行う。当該地は第5種風致地区の指定地で20%以上の緑地率を確保する必要があることからオープンスペースとしてなるべく緑地を確保するよう努める。
▽史跡標識・史跡説明板に関する基本設計=最も効果的と考えられる場所に史跡標識及び史跡説明板各1基を設置する
▽修景及び植栽計画について=基本計画書」の修景及び植栽に関する計画に記載されている内容を尊重する。西側には高木等根系が遺構面に達する恐れがあるものは植栽せずに地被類等とする。
▽公開・活用及び管理施設等に関する計画=整備施設(覆屋、ベンチ及び四阿)と園路はバリアフリーに対応した仕様(段差解消、車いすが通行できる幅の確保など)となるよう配慮する。
▽美術館等との連携・協働による展示・解説及び活用=整備施設(遺構見学施設、休養施設等)のデザインや配置及び緑地の設計では今後予定する美術館の再整備計画に留意し、美術館と連動・調和した空間形成を図るため将来、美術館の再整備時おいて、この史跡の見せ方等が組み込まれる可能性もあることを前提に行う。
▽概算事業経費の算出と事業実施計画の策定=工種または工期ごとに必要とされる概算事業経費の総額を算出する。また、算出した概算事業経費に基づいて整備実施の詳細な工程計画を策定する。
▽整備基本設計図書の作成=基本設計図(平面図・断面図・立面図等)及び工事に要する概算事業経費と工程計画表及び設計の概要をまとめた報告書を作成する。
▽実施設計に向けた検討=仕様書(案)の作成及び与条件の整理、業務説明書やその根拠となる協議資料等を作成する。

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