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県文化財保存事務所 国宝金峯山寺二王門耐震補強 今年内に実施設計 文化財構造計画に業務を委託

2024.9.19 県文化・教育・くらし創造部

 奈良県地域創造部 文化財保存事務所は、現在解体修理が行われている国宝金峯山寺二王門について、令和元年度に策定した補強基本案に基づいて今年内に基礎補強及び上部架構補強の実施設計を行い、概算工事費を算出する。
 一般競争入札「国宝金峯山寺二王門耐震補強実施設計業務6文保委第2号」を落札した文化財構造計画(大阪市淀川区西中島5丁目13番地12号谷ビル。冨永善敬代表取締役)奈良営業所(河合町高塚台3―2―14)に業務を委託した。業務場所は吉野町吉野山2498番地の金峯山寺境内。業務は国宝金峯山寺二王門の耐震補強実施設計。委託期間12月20日。担当は事業係(電話0742―27―9865)。
 国宝金峯山寺二王門は、石垣を築いた上に建てられた大規模な二重門で、風鐸銘により室町時代中期の康正2(1456)年頃の建立とされる。その後の修理については詳らかでないが、昭和18年~25年にかけて半解体修理を、昭和45年には初重の屋根及び壁の部分修理を受け、平成10年度には台風被害による災害復旧事業として屋根の部分修理を受けた。しかしその後も特に建物東側での不同沈下が看過できない状態に至り礎石の破損も見られ、また、不同沈下により水平材が曲がっているほか、松材を主とする構成木部材の随所に虫害が見られること等から、解体修理事業が企画されて令和2年度より工事に着手している。現在は、門本体は解体済みで基礎が露出している状況。
工事に先行する調査工事期間中の令和元年度事業で実施した耐震診断においては、現状の構造性能は大地震時或るいは中規模以上強風時に倒壊の恐れがあるとの判定を受けており、同時に基礎及び上部架構について補強基本案を策定し、これについてこの保存修理事業で設置されている有識者による専門委員会において概ね了承を得ている。
当該業務では、この補強基本案に基づいて基礎補強及び上部架構補強の実施設計を行い、実施仕様書・数量調書・積算内訳書・同明細書の作成、積算根拠資料のとりまとめ、概算の積算を実施する。但し、基本案策定以降の二王門本体の解体を通して確認できた知見を踏まえての解析モデルの修正を合わせて(先行して)実施する。なお、史跡に係る発掘調査結果を受けて基本案については特に基礎部分において一部見直しが必要となる。
構造形式は木造三間一戸二重門で入母屋造 屋根本瓦葺。桁行(桁行両端柱間真々)は初重13・347㍍二重11・440㍍、軒高(側柱礎石上端より茅負外下角まで)は初重6・765㍍二重12・974㍍、棟高(側柱礎石上端より棟頂上まで)20・230㍍、屋根面積は初重356・814平方㍍二重400・492平方㍍。
国の史跡・名勝「吉野山」として指定された区域に立地しているため、基礎補強工事を実施するに当たっては国の許可を取り付ける必要があり、その最低限の要件として解体せずに現状のまま存置する礎石を数ヵ所設け、礎石の据付け遺構を保存することを求められていることを受けて、全12ヵ所の礎石のうち風化岩層の直上に載ると見られる少なくとも2ヵ所については礎石の解体を実施せず現状のまま存置させる方針で修理計画を進める。
初重は補強案1B(鉄骨フレーム補強)、二重は補強案2A(鉄骨フレーム補強)と補強案2B(鋼製ブレース補強)の併用案で行う。二王門の解体中或いは解体後に判明した知見、特に接合部や使用樹種を加味しての物性値や固定荷重の見直し、診断モデルを修正して追加検討のうえで修理計画を加味して実施設計を行う。基礎補強工及び上部架構耐震補強工に係る概算工事費を算出する。(吹上)

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