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ドローンで橋梁点検 新技術でコスト縮減、安全性向上
2024.2.1 企業国交省近畿地方整備局五條市
近畿地方整備局奈良国道事務所と五條市などは1月29日、ドローンや画像診断サービスを使って橋梁点検するデモンストレーションを五條市の大川橋で実施。県内自治体職員ら34名が参加し、新技術による効率的かつ安全な点検を見学した。
大川橋は1962年に建てられ、架設から62年経過している。従来は点検に際し橋梁点検車からアームを伸ばして点検していた。今回、ドローンの撮影にかかった費用は約64万円で8割の低減。画像診断サービス「ひびみっけ」では、従来365万円を要するところ、162万円まで抑え、全体でおよそ5割のコスト削減が見込まれた。
奈良国道事務所の伊藤努事務所長は「昨今、インフラの老朽化が大きな問題ですが、まずは状況を把握し、点検をしっかりするということが初めの第一歩。限られた予算とマンパワーで効率的にやっていくことが大事。技術向上に貢献できれば」と挨拶。
平岡清司五條市長は「五條市内で市が管理する橋梁数は400橋。非常に危険な箇所でも目視による作業があり、コスト削減はもとより安全面も重視したい」と話した。
ジャパン・インフラ・ウェイマークが開発したドローンは、全方向衝突回避センターを有しており、カメラレンズが上下に各3つ付属している。GPSが届かない場所でも、自らの位置を画像で判断し、障害物を回避することができる。これまでは、ドローン真上の撮影は難しかったが、新技術により床版下面の損傷も撮影可能となった。さらに高解像度の魚眼カメラを内蔵しており、0・2㍉のひび割れまで判読できるという。交通規制などの社会的影響が低減され、安全性も向上した。
ドローンのサイズは、L223㍉、W273㍉、H74㍉。重さ775㌘。カメラは4K1200万画素を使用。1バッテリーにつき23分の飛行が可能で、最大通信距離は2㌔㍍。位置補正にはGPS、VIO、SLAMを活用している。最大風速抵抗は約10㍍/s。ドローンを飛行する際は法律により、人または物件と30㍍以上の距離が必要のため、橋梁点検の場合は飛行許可申請の提出が推奨される。
画像診断でひび割れ検出
ドローンと共に紹介された、富士フイルム開発の社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」は、撮影したものをクラウド上で画像処理し、ひび割れを検出する技術が特長。ドローンなどで撮影した画像を合成し、AIで損傷を検出したあと、JPGやCAD、EXCELに出力する。0・1㍉幅のひび割れも検出し、結果を編集することができる。ひび割れの幅や長さ等の情報は、補修設計等に活かせられる。ドローンだけでなく、一眼レフカメラも対応可能。富士フイルムの医療画像解析技術を応用し、角度のついた画像も補正する。コストは約4割の削減が見込まれた。インターネットが使えない現場でも合成画像を確認し、撮り漏れを防ぐことができるため実用性がある。今回は15分間で173枚撮影し、59枚を使用。
ひび割れを検出する場合は、インターネット環境が必要となるが、ボタン1つで合成から検出まで約30分~1時間程度で完了する。
近畿道路メンテナンスセンターの高祖亮一保全対策官は「大川橋は桁の間隔が1㍍未満であり、ドローンが入り込めなかったので、実際に大川橋を点検する場合は高所作業車が必要になる。新技術と人、それぞれ適材適所で補い合うように対応してもらいたい」とコメントした。
奈良県内の橋梁数が計1万12橋に対して、自治体等が管理する橋梁数は9340橋。9割の橋梁点検を各自治体が行っている。2019年に点検要領の改定があり、新技術活用が認められ、自治体への普及を促している。2040年には建設後50年以上経過する道路橋は約75%に上ると言われる。新技術の導入で自治体の負担が減少すれば、インフラ老朽化問題を緩和する効果が期待できる。(岡本)