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電子入札で新手の“談合”か 他者の電子入札を代行

2022.10.7 その他

最近、国や自冶体が発注する一般競争入札に「電子入札システム」を採用しているところが多い。電子入札は、参加に必要な電子証明書(ICカード)を使って、官公庁の電子システムにアクセスして入札手続きを行う仕組みだ。先ごろ、大阪市が発注した工事の電子入札で、新手の『談合』とみられる不正が明らかになった。
「談合」とは、競売や入札に参加した事業者があらかじめ示し合わせて、特定の業者に落札させるために、他の業者は一定価格以上の値をつけない(入札の場合は一定の価格以下の入札をしない)といった協定を結ぶことをいう。これによって、高い価額での落札や持ち回りでの落札などを行うことができ、そのため、公正な競争を阻害し、利益を不正に分け合うものであるとして、禁止されている。 
談合罪(刑法96条の6第2項)は、公正な価格を害し、または不正な利益を得る「目的」で行われた場合に限って処罰される目的犯である。
平成6年度に導入された一般競争入札までは指名競争入札が入札の主流であった。指名競争入札は、発注者が入札に参加する事業者(公開)を予め指名し、幹事会社がチャンピオン(落札候補者)を決め、入札参加者を集めて協議(価格調整)をしたり、順番に仕事を請け負えるように同盟を組んだりすることがあり、これによって談合が生じてしまうケースがあることから次第に問題視されるようになり、現在では一般競争入札が原則とされている。
今回の不正はどうか。電子入札の盲点とも言える新たなシステムによる談合のからくりはこうだ。特定の建設会社(世話役)が、一般競争入札に参加した業者から電子入札への参加に必要な電子証明書(ICカード)を預かり、それらの会社から入札価格を聞き取った上で、他社のICカードを使って、自社のパソコンから電子入札システムにアクセス。他社の入札価格を入力して、電子入札手続きを代行していた。電子入札制度では、建設会社にICカードの自社での保管を義務付けている。カードを他社に預ける行為は禁じられている。
こうした行為について、近畿地整建設産業第一課の担当者は「ICカードを他社に預けるのは通常あり得ない」と指摘。「独占禁止法や刑法における談合と認めていないが、談合と受け取られても仕方がない」と話している。
今回の不正で大阪市や近畿地整は、世話役の会社及び参加業者を指名停止にした。
(橋本)

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