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県公園緑地課 4年度末に設計へ 飛鳥宮跡保存活用計画を策定 計画期間は12年度まで 6年度に整備工事着手
2022.6.21 県地域デザイン推進局
奈良県土マネジメント部地域デザイン推進局公園緑地課は、「飛鳥宮跡保存活用計画」を、飛鳥宮跡の本質的価値を次世代に継承するため凍結保存ではなく、その歴史的意義を発信し、社会教育や地域振興等に資する歴史文化資源として積極的に活用することを目的として策定した。
計画期間は令和12年度まで。計画対象範囲を約4・3㌶として遺構表示やガイダンス施設の整備等を盛り込んだ。県では、6年の世界遺産登録をめざす「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の主要な構成資産であり、飛鳥宮跡保存活用計画の策定は、国内推薦を得る後押しになるものと考えている。
今年7月にはパブリックコメントを実施、10月にも整備基本計画を策定する予定。令和4年度末から5年度にかけて基本設計や実施設計(建築・施設)を行って6年度から整備工事に着手するスケジュール。担当は総務管理係(電話0742―27―7517)。
令和12年が飛鳥宮の最初の宮である飛鳥岡本宮造営から1400年に当たることを念頭に、今後、県が国や明日香村等と連携・協力して、飛鳥宮跡の活用に取り組み、早期に効果が発現できるように努める、としている。
飛鳥宮跡は、明日香村に点在する寺社・陵墓・遺跡など多くの歴史文化資源の中核となる重要な遺跡。昭和34年から県立橿原考古学研究所による発掘が行われ、明日香村の協力を得て県が対象地の公有化及び史跡の追加指定を進めている。また、北西に隣接する史跡・名勝飛鳥京跡苑池についても県が遺構の復元と便益施設の整備等を行っている。
飛鳥宮跡の保存と活用については、平成26年に明日香村が策定した「飛鳥宮跡保存活用基本構想検討報告書」でその方向性が示され、国は文化財保護法を改正し、文化財を積極的に活用していくとの方向性を打ち出している。
県では、飛鳥宮跡を単に保存・継承するのにとどまらず、地域振興等に資する歴史文化資源として積極的に活用することをめざして「飛鳥宮跡活用検討委員会」を設置して検討を進めている。
「飛鳥宮跡保存活用計画」では、目標を『「日本国」の誕生と形成の過程を今に伝える古代宮殿の遺跡を確実に保存し、日本文化の基礎となった宮廷生活を体感できる場として活用することにより、広く国内外に歴史を深く理解する機会を提供する』としている。
整備基本計画では、計画対象範囲を明日香村岡に所在する史跡飛鳥宮跡及び周辺地を含む約4・3㌶の内郭周辺エリアとしている。内郭及びエビノコ郭の外側に設置された囲繞施設によって囲まれた南北約800㍍東西約300~450㍍の範囲の外郭エリアは内郭周辺エリアとの一体的な活用を、外郭エリアのさらに外側で明日香村風致地区条例の第1種歴史的風土保存地区に指定されている周辺地域は内郭周辺エリアとネットワークを形成した活用を考慮する。計画対象範囲の内郭周辺エリアを次の3地区に区分し、それぞれ整備計画(案)を示している。
【内郭内部地区(1―1地区)】
掘立柱塀により区画された内郭の内部で史跡の枢要を成している。天皇の公的区間(主に南側)と私的空間(主に北側)であった場所で、政治や儀式の中心地で内裏的空間とも呼称する。宮殿を構成した建造物の遺構が多く確認されており、そのほとんどが地中に埋設されている。北半は第1種歴史的風土保存地区、南半は第2種歴史的風土保存地区。主な遺構は南門、内郭前殿、南北東西建物、内郭南正殿、内郭北正殿、長廊状建築物、大型井戸等。遺構を万全に保存するとともに、北半では景観への配慮がより求められる。
▽重要施設の遺構表示と実物展示の検討=①宮殿の公的及び私的空間での重要施設(南門・前殿・南正殿・北正殿・長廊状建物)の立体的な規模を表現する遺構立体表示を実施する②宮殿の私的空間の既整備区域(北東部)は老朽化が進行しているため遺構平面表示の再整備を実施する③前2項の重要施設や既整備区域以外で検出された建物跡はその形状や範囲が推定できる遺構について平面表示を実施する。また、内郭内部の中軸より西側の建物遺構は平面表示を、東側の建物遺構は既整備区域の建物の柱列表示と同様に柱列立体表示を行う④発掘調査を実施してモニタリング孔を兼ねた実物展示を検討する。
▽内郭の規模や構造が把握できる遺構表示=①内郭の規模を体感できるように内郭北側外壁の一部において遺構立体表示を実施する。その範囲は北側の農村風景の眺望を妨げないように配慮する②前殿と南正殿の間で検出された柱列(SA7904)を遺構立体表示し、その南側は検出された石敷を復元する。
▽農村風景と共存する公開・活用のための施設整備=①東西のサブエントランスにおいて導入動線を考慮した誘導サインや飛鳥宮跡の案内サインを整備する②内郭北側で遺構表示を行う長廊状建物や内郭北東の遺構の範囲を板張りにすることでその規模や配置を表示し、かつ北方や周囲を見渡せるビューポイントとして整備する③南門から長廊状建物に向けて重要施設の中軸を基本にバリアフリー園路を設定する④柱列(SA7904)より北は芝生を基本とし、周囲の農村風景との調和を図る。発掘調査未実施区域は地場府広場とする。
【内郭南方地区(1―2地区)】
史跡の枢要を成す内郭への正門である南門の南側に当たり、「庭」とされる重要な儀式等が行われていたと考えられる場所。凡そ半分が第2種歴史的風土保存地区。南東隅にエビノコ郭が位置する。主な遺構は砂利敷広場、石溝等。
▽飛鳥宮跡のエントランスとしての整備=①律令制の象徴的空間である儀礼の場として体感できるよう、調査によって検出された礫石敷を復元して礫石広場(エントランス広場)として整備する②メインエントランスのエントランス機能として導入動線を考慮した誘導サインや飛鳥京跡苑池とエビノコ地区を含む飛鳥宮跡エリアの総合案内・情報コーナー等を整備する。
▽計画対象範囲外の現明日香村役場やエビノコ郭エリアを含めた活用を見据えた整備=史跡指定地外の公有地(南側の現明日香村役場)において、ガイダンス施設の整備を検討する。
【内郭北方地区(1―3地区)】
内郭内部北側及び東側に接している場所。北側は内郭内部と密接に関わって内裏空間の一部と考えられ、東側は調査事例が乏しく様相は明らかになっていない。大部分が第1種歴史的風土保存地区内。主な遺構は塀と溝による回廊状の大きな方形区画等。遺構の保存とともに水田景観の保全も望まれる。
▽飛鳥周遊観光の動線を考慮したサービス施設の配置=①東側サブエントランス機能として総合案内サイン・情報コーナー等を整備する②史跡指定地外の公有地(古都買入地)において、休憩所・身障者用駐車場等の整備を検討する。
▽史跡・名勝飛鳥京跡苑池と連携した施設整備=①飛鳥京跡苑池とサブエントランスを結ぶバリアフリー園路を整備する②西側サブエントランスのエントランス機能として飛鳥京跡苑池休憩舎において、案内・解説施設等の再整備を行う。