一般記事
県住まいまちづくり課 アルテップに業務委託 3年度県の住まい方改善検討 北部地域は郊外住宅地とマンションの問題 南部・東部地域は公営住宅の具体的な課題
2021.9.28 県地域デザイン推進局
奈良県住まいまちづくり課は、令和3年度に北部地域で郊外住宅地とマンションに係る問題、南部・東部地域で市町村営住宅と県営住宅に係る事業について課題を整理し、今後必要となる施策を検討するため、公募型プロポーザルよりアルテップに業務を委託した。
県土マネジメント部地域デザイン推進局住まいまちづくり課は、「令和3年度奈良県の住まい方改善検討業務(奈良県の住まい方改善検討事業(都づくり))第R3―02―委1号」の公募型プロポーザルについて、2者から提出された参加表明書及び技術提案書について評価基準に基づき審査し、100点満点中68・76点でアルテップ(東京都港区赤坂8丁目)を受託業者として特定、1199万円込(業務量の目安は1200万円込が限度)で契約を締結して業務を委託した。
県には、歴史の古い集落から新興の郊外住宅地まで多様な地域・住宅地があり、それぞれの成立ちや立地条件等により地域特性が大きく異なっている。また、それぞれの地域によって高齢化の進み具合や暮らし方・地域への愛着及びコミュニティのあり方などが違い、住民の必要としている住まいや暮らしのあり方も異なり、それぞれの地域が多様な歴史や経緯を持ち、古くからの住まいや暮らし方及び自治活動や地域の繋がりを大切にして住み続けてきたこと自体が奈良県の大きな特色とも言える。一方で、近年の社会経済情勢の変化に伴い、それぞれの地域・住宅地ごとに特有の課題が浮彫りになってきているところであり、地域住生活の維持のためにはそれぞれの地域特性ごとに対応方策を検討する必要がある。
そこでこの業務においては、県を北部地域と南部・東部地域に分け、北部地域については郊外住宅地とマンションに係る問題について、南部・東部地域については市町村営住宅と県営住宅に係る事業について具体的な課題を整理することにより、今後必要となる施策を検討することを目的とする。
業務概要は県全域を対象に①住宅地のリニューアルに関する検討②マンション管理適正化に関する検討③奈良県南部・東部地域についての住まいのあり方検討―を行うもの。委託期間4年3月18日。担当は住まい企画係(電話0742―27―7540)。業務内容は次の通り。
【住宅地のリニューアルに関する検討】
全国的に人口・世帯数の減少、高齢化等により地域の衰退が懸念されている。とりわけ奈良県では大阪・京都等のベッドタウンとして郊外住宅地やニュータウンとしての住宅地が多く開発されてきた経緯があり、特に大規模開発された郊外住宅地においては、一つの住宅地に一度に多くの同世代が移転したことから急激な高齢化により急速な地域の衰退が懸念される。
このことから郊外住宅地における高齢者の住まいやすさや若者世代を流入させることによる地域の活性化及び空き家空き地の解消など、まちのリニューアルを進めていくことが必要と考えられるが、それぞれの住宅地ごとに住民生活の状況や立地条件等の地域特性が異なることから、それぞれの地域特性に応じた対策を検討することが必要となる。
そこでこの業務では、地域特性に応じたまちのリニューアル方策についてモデル的に検討を行い、効果的な対策方法を調査・研究することにより、郊外住宅地におけるまちのリニューアルや地域の活性化に向けた取組みを行おうとする市町村を支援することが目的。
▽調査対象団地の概況整理=平成27年度に実施した地域空き家対策推進検討業務委託で概況を整理した20団地について①住民に関わる現況及び推移状況②住宅及び敷地に関わる現況及びこれまでの推移状況③対象団地周辺5㌔㍍以内の生活利便施設等の分布状況④対象団地周辺5㌔㍍以内の公共交通網の状況―を最新の情報に更新する。
▽まちのリニューアルに係る調査、検討=前項の調査結果を踏まえて地域が抱える課題等の実態調査を行い①空き家・空き地の増加に係る住宅地の将来像の把握②住宅・宅地ニーズが低下した土地・建物の有効利用の方法及びその利用を促進するための有効なインセンティブの方法③大阪・京都都市圏の他の郊外住宅地に勝る奈良県の住宅地の魅力の分析及びその有効な活用方法④奈良県出身者・在住者に住み続けてもらう方策及び多様な世代・属性の者が地域に共生して居住していく方策―の観点で郊外住宅地の立地条件や年齢別人口分布など各種条件に応じて「まちのリニューアル」を実現するための課題分析及び解決方策についての検討を実施する。検討内容は昨今の新型コロナウイルス感染症対策に伴う社会経済情勢の変化が将来に与える影響を考慮すること。調査方法として生活環境に関する現況調査及び自治会等の住民活動団体や各種生活サービスの運営事業者と県への移住希望者に対する意識調査等を含むことを想定しているが、その他有効な方策を実施する場合はこの限りでない。また、調査対象団地の決定は調査職員と協議し、当該調査実施に当たっては対象団地の存する市町村と協力して行う。
【マンション管理適正化に関する検討】
奈良県は昭和40年代以降に大阪・京都等のベッドタウンとして発展してきた経緯があり、県北西地域の駅前等を中心に多くの分譲マンション(約5万~6万戸と推定)が立地している。今後、建物の老朽化や居住者の高齢化の進行等に伴う管理不全状態を防ぐためにも、適切な修繕・管理等を通じてマンションの長寿命化や更新の円滑化を図っていくことが重要な課題。
令和2年6月には行政の役割の強化を通じた管理組合によるマンションの適正管理の推進と老朽化等が進み維持修繕等が困難なマンションの再生(建替や売却等)のさらなる円滑化の一体的な対応を目的として、マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律が公布された。同法の規定により都道府県は国の基本方針に基づき、管理適正化の推進のための計画を定めることができるようになり、計画を定めた地方公共団体は一定の基準を満たすマンションの管理計画を認定することができることとなる。
この業務は、奈良県に立地するマンションが適切な管理計画を定めることができるよう、県のマンションを取り巻く現状の把握及びマンション管理の適正化に関する施策の方向性の検討等を行い、マンション適正化ガイドライン(案)の作成を行うことが目的。
▽奈良県のマンションをとりまく現状把握=県のマンションに関する現状を把握するため①県内のマンションの立地分布と建築時期や構造・規模及び立地条件等の現況を整理②マンション管理組合の運営体制や活動に関する状況整理及び分析③管理費や修繕積立金の集金や滞納への対応など会計上の整理④長期修繕計画に基づく計画的な修繕計画の状況⑤耐震性・防災上の状況―について調査・分析を行う。なお、調査に当たっては住宅・土地統計調査や国勢調査等の最新の各種統計資料の分析に加え、令和2年度に特定非営利活動法人奈良県マンション管理組合連合会が実施した奈良県分譲マンション管理の実態調査を活用し、具体的な実態を調査し取りまとめる。
▽課題と対策=現状把握の結果を踏まえて奈良県のマンション管理適正化への課題及び対策について整理する。
▽他府県事例等の調査=県の施策及び成果指標の検討を行うに当たり参考となる他府県事例を調査し取りまとめる。
▽マンション管理適正化に関する検討=以上の結果を踏まえ①マンションの管理の適正化に関する目標②マンションの管理の状況を把握するために講ずる措置に関する事項③マンションの管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項④管理組合によるマンションの管理の適正化に関する指針に関する事項⑤マンションの管理の適正化に関する啓発及び知識の普及に関する事項―について検討する。
▽マンション管理適正化ガイドライン(案)の作成=県がマンションの管理計画を認定するに当たって県のマンションの現状や施策の方向に応じた必要な基準の考え方を整理するとともに、今後、県内各市がマンション管理適正化推進計画を作成する際に活用できる県のガイドラインを作成する。
【奈良県南部・東部地域についての住まいのあり方検討】
南部・東部地域(「奈良県南部振興基本計画」及び「奈良県東部振興基本計画」の対象地域)の市町村においては、過疎化・高齢化の進展や地域コミュニティの弱体化及び地域産業の衰退等の多くの課題を抱えているが、課題の解消に向けては地域の魅力的な資源を活用した定住の促進や産業振興の強化などの取組みが必要。
各市町村それぞれがこれらの課題の解消をめざして定住促進や交流人口の増加及び地域コミュニティの維持・向上に向けた住まいを基軸とした各種プロジェクトに取り組んでいるが、昨今の社会情勢が大きく変わりつつあるなかで、既存の事業手法からさらに知恵を絞った取組みが求められている。
この業務では住宅施策の観点からこれからの南部・東部地域特有の課題解消に向けた住まいに係る総合的な支援の実施が目的。県と市が連携した公営住宅建替モデル検討として老朽化が著しい秋津県営住宅とその周辺の茅原県営住宅・御所県営住宅を中心に、周辺の御所市営住宅(改良住宅等を含む)も含めた公営住宅等全体の建替について、これまでの県と市におけるそれぞれの検討の成果を踏まえて県営住宅と市町村営住宅とが連携した建替モデルの構築に向けて次の検討を行う。
▽状況把握=対象となる団地周辺の賃貸住宅の立地状況や空き家数と人口・世帯数増減及び生活利便施設や各種サービス施設の立地状況や開発動向の把握や法規制等の整理などの情報の整理。
▽御所市との協議を行うための事業条件の整理=①令和2年度に検討した県営住宅及び御所市営住宅の集約・再編案について事業手法別に事業コストや事業スケジュールと奈良県及び御所市の必要職員数や住民負荷の大きさなど県・御所市・住民の各主体にそれぞれに係るメリット・デメリットを整理し、今後事業を進めていくうえで支障となる課題を検討する②県と御所市が事業を進めていくための役割分担についてそれぞれの事業主体にとってのメリット・デメリットを具体的に整理する③集約・再編により移転する県営住宅及び市営住宅の跡地について周辺環境の状況により跡地活用するに当たっての課題を整理する。
▽PPP/PFI導入検討=御所市が実施を予定しているPPP/PFI導入の検討業務との調整を図り、前項の検討内容に反映させる。