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大防法と石綿則の改正が4月施行 発注者、元請けの理解が不可欠
2021.8.18 その他
平成28年6月の建設業法の一部改正に伴い、建設業許可の業種区分(29番目)に解体工事業が新設され、5年が経過した。令和3年4月末までに解体工事業の許可を取得した業者は6万1232者(知事許可5万8455者、大臣許可2777者)となり、電気や塗装の許可業者と同じ水準まで許可業者数を増やしている。業種区分の新設に伴い、施行後5年間続いていた経過措置も今年の6月末で全て終了した。
解体事業は、老朽化した建築物や土木構造物の更新需要を下支えに、今後20年程度の市場拡大が見込まれている。
一方で昨年には、解体工事に深く関わる大気汚染防止法(大防法)と石綿障害予防規則(石綿則)が改正され、主要な改正事項が今年4月から施行された。アスベストの事前調査や分析、含有が判明した場合の除去方法、廃棄物処理に至るまで、より一層の透明性の確保が求められることとなった。
一連の法令改正は、解体現場を石綿の飛散・ばく露防止対策の主戦場と位置付け、抜本的に対策を強化するものだ。全ての石綿含有建材を規制対象に位置付けるとともに、解体工事に先立って石綿含有建材の有無を調べる「事前調査」の方法を明確化。事前調査での石綿含有建材の見落としや不適切作業が散見されてきた実態を踏まえ、解体工事の着工前から完了後に至るまでの全ての段階で安全確保対策の実効性を高めようとしている。
今後の課題は、これからの解体工事業者は単なる解体の施工能力だけでなく、解体現場に関わる全ての業務に精通し、石綿含有建材の事前調査も自分でできる能力を持たなければいけない。事前調査を元請けに任せるのではなく、解体工事業者も調査者資格の取得に向けて、自社で講習を修了した担当者を置くなどの対策が必要だ。『一定の知見を有する者』による石綿含有建材の事前調査と分析が令和5年10月1日以降に義務付けられる。
また、これらの改正事項を着実に実施できる体制を、解体工事に関わる全ての関係者で構築することだ。解体工事業者が法令改正の趣旨を理解し順守するのはもちろん、対策の強化に伴って必要になるコストの増加や工期の延長への発注者、元請けの理解も欠かせない。
解体工事業が、石綿の飛散という脅威から解体現場の周辺地域の住民、作業に従事する労働者の生命と健康を守るという絶対の責務を果たし、社会から信頼される「専門性」を持った業種として確立する上で、これからが正念場だ。