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文化財保存事務所 隅大斗を揚前取替へ 興福寺五重塔構造補強設計等

2025.5.20 県文化・教育・くらし創造部

 奈良県地域創造部文化財保存事務所は、屋根葺替を中心とした保存修理を行う国宝興福寺五重塔について、隅大斗に材料強度を超越した長期荷重が生じて部材にも破損が確認されていることから、部材の取替・補強を行うための五重塔全体の揚前工事を計画しており、令和7年度に塔木部に破損を生じさせない適切な揚前が施工できるよう、工法を検討して基本計画を作成し、工事実施図の作成と工事費の概算を行う。
一般競争入札「国宝興福寺五重塔構造補強設計等業務7文保委第2号」を6月5日に開札して業務を委託する。業務場所は奈良市登大路町48番地の興福寺境内。業務は興福寺五重塔の構造補強設計等。委託期間8年3月27日。予定価格5276万7000円込。五重塔の保存修理のための素屋根建設は清水・尾田・中和JVが担当。敷地面積約3900平方㍍。施設計画ではS造10階建延べ面積約8126・03平方㍍。
業務の対象となる取替範囲は原則として初重隅大斗のみを想定しているものの、二重隅大斗までの取替となる場合がある。工事費の概算金額は9月30日までに提示する。担当は事業係(電話0742―27―9865)。
▽立体解析モデル作成(揚前設計用詳細モデル)=揚前施工に際して適切なジャッキポイントを検証するための立体解析モデル。
▽二重大斗の詳細解析=立体解析モデルを用いて屋根瓦葺替工事時の想定瓦取替率を反映させた応力解析を実施し、実部材の現状も踏まえて長期荷重に対する当該部材の材料検定を行って取替の是非を考察する。
▽ケヤキ材の材料強度試験及び結果考察=大斗の補強案を検討するため、県が提供するケヤキ材(初重隅大斗の取替材として用いる材木から取得した新生剤)に対してインハルスハンマーを用いた弾性波伝播時間測定による弾性評価を行って材料強度試験の計画立案及び試験結果からの強度推定を行う。
▽大斗補強金物基本設計=上下2枚の鋼板プレートと鋼棒シャフトを取り付ける工法で補強金物はステンレス製またはチタン製を想定している。
▽揚前基本計画策定=五重塔の各部材に生じている応力を解析して揚前を行うジャッキポイントの検討及び反力を支持する揚前構台の基本計画を作成する。
▽3次元スキャン計画(初層内部・小屋組)=揚前構台が支障なく架構できるよう、五重塔初層の内部・小屋組で3次元スキャナーによる計測を行って塔内部各部材の位置や隙間を3次元的に整理する。
▽地耐力確認(平板載荷試験)=平板載荷試験を行って地耐力が揚前反力を満たすことを確認する。
▽免震設計=ジャッキアップ実施後に五重塔躯体を構台に預けている期間(半年~1年を予定)に発生する可能性がある地震動に対して五重塔躯体及び揚前構台の耐震性能を検証し、必要に応じて揚前構台に免震装置を計画する。
▽工事実施図作成及び工事費概算。
▽報告書作成。

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