民間情報

進まない日本の無電柱化 新たな「無電柱化推進計画」策定

2021.6.3 カテゴリ2(民間情報)

国土交通省は5月25日、平成30年から進めている「無電柱化推進計画」について、本年度を初年度とする新しい5カ年計画を発表した。この新たな推進計画では、計画目標を「5年間で約4000キロ㍍の新たな無電柱化に着手」する。この計画目標を達成するため、「新設電柱を増やさず、緊急輸送道路では電柱を減らす」「徹底したコスト縮減を推進する」「事業のさらなるスピードアップを図る」という3つのポイントを掲げている。また、電線類を地中化した場合に占用料を減免する取り組みも引き続き行うほか、地方自治体にも同様の措置を導入するよう働きかけを行っていく。

平成28年に施行された無電柱化の推進に関する法律に基づく初の無電柱化計画は、平成30年度から3年間で、全国の道路1400㌔㍍(後に1000キロ㍍追加)で整備するものであったが、目標の無電柱化率には程遠い。これは、年間で無電柱化が電柱換算で1万5000本相当行われるのに対し、電柱の新たな設置は7万本。つまり、電柱は増え続けていく計算。国交省はこうした状況を受け、全国で電柱の新たな設置についての実態調査に乗り出すことを決めた。
無電柱化の対象道路は、防災のための「緊急輸送道路、避難所へのアクセス道、避難道など」、安全・円滑な交通確保のため「バリアフリー化が必要な道路、通学路等」、景観形成・観光振興ため「世界遺産周辺や重伝建地区等」である。

なぜ、無電柱化は進まないのか。理由として、コストが高く、たった1キロ㍍作るのに5.3億円かかる高額なコストがネックとなっている。設計時のコスト比較の徹底や浅層埋設等の普及、新技術・新工法の導入による更なる低コストの促進が必要だ。また、工期が長すぎるのもその一つ。関係省庁と自冶体、そして電線管理者が連携しながら包括発注の仕組みを導入し、同時施工や調整の円滑化を図り、事業のスピードアップを促進する取組みも必要だ。
「電柱大国」と揶揄される日本。電柱は街の景観を損ね、事故を誘発し、交通の妨げにもなる。台風や地震などの災害で倒壊し、人や物への損壊のみならず救助活動や物資の輸送に支障をきたすことにもつながる。
道路の無電柱化は、こうした様々な問題をクリアーするだけでなく、緑や自然、歴史に溶け込み、地域と調和・共存する街並み形成に不可欠である。特に災害が多い日本では、無電柱化は喫緊の課題である。

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