民間情報

技能実習制度見直しへ 制度の目的と実態が乖離

2022.10.18 カテゴリ2(民間情報)官公庁

建設関係の失踪者 全体の半数強

 農漁業、建設業などの深刻な人手不足を解消するため、外国人労働者の受け入れ拡大の起爆剤として期待された在留資格「特定技能」の取得者が増えていない。
技能実習制度は平成5年に創設された。その目的は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」第一条により、「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする」と定めている。
 つまり技能実習は本来、海外への技能移転を目的としているため、「労働力として雇用するための制度ではない」ということだ。
低賃金や長時間労働などが問題化し、適正化法で実習生保護を図ったものの、待遇は十分に改善されず、失踪者が増加しているのが実状である。
実習期間は最長5年である。「技能移転」が目的であれば長く日本に留まる必要性はなく、技能実習は「永住」の取得ができない在留資格である。また、技能実習から特定技能へ移行が可能で、最長10年間働ける可能性がある。
厚生労働省は技能実習生の適正な実施について、全国の労働局や労働基準監督署が昨年に労働基準関係法令違反の疑いで監督指導をした建設関係の事業場は1528社で、そのうち法令違反があった事業場は1228社と公表した。
 主な内容は、割増賃金の支払い違反(403事業場)、安全基準違反(299事業場)、賃金の支払い違反(295事業場)だ。
入管庁によると、令和3年に判明した実習生の失踪者は7167人。そのうち、建設関係は3838人で、全体の53・6%を占める。入管庁が職種別のデータの公表を始めた平成30年以降、建設関係では失踪者数、構成比ともに過去最高となった。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響などもあり、建設関係の失踪者数には年によって増減があるが、構成比は平成30年39.9%、令和元年40.8%、2年45.7%と一貫して上昇している。今や失踪者の2人に1人が建設関係だ。
 政府は7月、古川禎久法相(当時)が外国人技能実習制度を見直す方針を表明。「人づくりによる国際貢献という技能実習制度の目的と、人手不足を補う労働力として扱っているという実態が乖離(かいり)している」と指摘。見直しの背景には、一部の受け入れ企業で実習生に対する人権侵害が深刻化している問題があるとして、入官庁はこの企業の技能実習計画の認定を取り消した。
受入人数は、令和元年の41万人から、3年末には、27万人と減少している。
 国内の人手不足を背景に、外国からの人材に依存しなければならない状況に変わりはなく、受入れ先はビジネスモデルを足元から見つめ直し、特定技能をどう位置付けていくか、外国人が働きやすい環境整備など共生に向けた対策が必要だ。(橋本)

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