一般記事
県河川整備課 紀の川と淀川水系河川整備 環境モニタリングを 建設技術研究所で業務進む
2025.12.2 県土マネジメント部
奈良県県土マネジメント部河川整備課は、令和3年度以来3度目の進捗点検を実施する紀の川水系河川整備計画と淀川水系河川整備計画について、流域対策の効果が促進されることを目的に、令和7年度から8年度上半期に進捗点検の4大項目「治水」「住民連携」「防災」「環境」のうち環境の小項目「動植物の生息・生育・繁殖環境及び生態系」で環境モニタリング調査を、ハード整備である河川改修と併せて実施する。
一般競争入札「紀の川水系・淀川水系河川整備計画進捗点検業務委託(河川水辺の国勢調査)第1―委―2号」により建設技術研究所奈良事務所(奈良市西大寺南町16―19フロンティアビル)に業務を委託して進めている。業務場所は紀の川水系・淀川水系。業務は環境モニタリング調査1式、調査とりまとめ1式。委託期間8年9月30日。担当は河川計画係(電話0742―27―7507)。
平成9年の河川法改正により治水・利水・環境の総合的な河川制度整備として河川環境の整備と保全、地域の意見を反映した河川整備の計画制度が導入された。長期的な視点に立った河川整備の基本的な方針とする河川整備基本方針に基づき、今後20~30年の河川の整備を計画的に実施する内容を示した河川整備計画の策定が義務付けられている。
県では、河川整備計画を策定するため学識経験者11名で構成する奈良県河川整備委員会を設置し▽大和川水系(生駒いかるが圏域、平城圏域、布留飛鳥圏域、曽我葛城圏域)▽紀の川水系▽淀川水系―の3水系において、同計画を策定して事業を進めている。
河川整備計画は長期計画のため、社会情勢の変化や自然環境の影響等を適切に反映できるように適時点検(フォローアップ)を行う必要がある。委員会では、策定した河川整備計画のフォローアップとしての進捗点検の役割を持っており、その役割には、当該計画に基づく事業についての奈良県公共事業評価監視委員会に代わる事業再評価に関する審議も含んでいる。平成24年度から開始した進捗点検も28年度までにすべての河川整備計画について完了しており、29年度から2巡目、令和4年度から3巡目の進捗点検を実施している。業務内容は次の通り。
【計画準備】
業務の目的と内容を充分に把握し、具体的な作業方法及び工程計画を検討して業務計画書を作成するとともに、業務の遂行に必要な諸準備を行う。
【進捗点検の環境モニタリング調査(河川の動植物調査)】
進捗点検の対象河川のうち2河川において環境モニタリング調査(1河川につき動植物調査2ヵ所、対照区間の調査2ヵ所)を行う。この調査結果については、奈良県河川整備委員会における進捗点検の大項目「環境」の小項目「動植物の生息・生育・繁殖環境及び生態系」の基礎資料として必要であるため、別途発注の「紀の川水系・淀川水系河川整備計画進捗点検業務委託(河川整備計画策定調査)」(令和8年度発注予定)の受注者と連携してスケジュールを適切に管理し、円滑に情報提供を行う。
▽既存の調査の整理=前回の3年度に実施した河川整備計画進捗点検業務の「環境モニタリング調査」や県内の小学生を対象とした「川の学校」の一つとして実施している「リバーウォッチング」(河川の水生生物探し)の結果等を参考に整理し、当該水域の動植物の生息状況の実態を把握する。また、注目すべき種については前回整理した注目すべき種(特徴的な在来種の状況〈典型種〉、貴重種、外来種)を基本とし、必要に応じて再整理を行う。
▽調査河川及び調査区域の検討=紀の川水系・淀川水系河川整備計画の進捗点検の対象河川より選定する予定。3年度に実施した河川整備計画進捗点検業務の「環境モニタリング調査」等を参考に、調査に向けた調査河川及び調査区域の検討と提案を行う①調査河川及び調査区域については進捗点検の対象河川より既往調査及び河川整備の進捗状況等を勘案して選定(事前調査または事後調査)する②調査河川について河川整備の影響を受けない上流などで整備区間と比較対照するための対照区間を設ける。
▽河川内の動植物調査及び対照区間の調査の実施=河川内の動植物調査について1ヵ所当たり植生調査は整備計画区間全域で相観植生図作成夏期(5月下旬)の1回、植物相調査は任意踏査・目視踏査を100~200㍍程度で夏期(5月下旬)の1回、鳥類調査は水辺鳥類を対象とした調査を整備計画区間全域で夏期(8月中旬~下旬)の1回、魚類調査はタモ網・投網等による捕獲調査を100~200㍍程度で夏期(8月中旬~下旬)の1回、底生動物調査は定性採集調査を100~200㍍程度で夏期(5月下旬~6月)の1回実施する。
▽河川環境の特徴の整理=前項の調査の結果及び閲覧・貸与資料の結果をもとに注目すべき種について各区域における環境(ハビタット)と生物の関係について整理する。既往調査があり経年変化を確認できる区域においては既存調査を整理し、経年的な変化も整理する。また、既存の河川環境情報図をもとに河川環境情報図を修正し、現在の河川環境の特徴をまとめる。
▽河川環境の保全のための配慮事項の整理=各区域における貴重種の生息状況と河川環境の特徴等に基づき、河川整備計画に基づく河川整備を進めるに当たって配慮すべき事項を整理する。
▽データ入力の実施=修正した河川環境情報図をもとに地図情報システム(GIS)を用いてデータ入力を行う。
▽大和川水系(奈良県域)のいきもの図鑑の更新=県では、大和川水系内で環境モニタリング調査において発見された生き物を図鑑としてとりまとめ、河川整備課ホームページ上で公開している。この業務の調査結果や「リバーウォッチング」(河川の水生生物探し)の結果等によりいきもの図鑑を更新する。
なお、紀の川水系・淀川水系に関する河川水辺の国勢調査とりまとめはこの業務では行わず、8年度に別途発注する業務において行う。別途発注業務の受注者が円滑にとりまとめを行えるように、環境モニタリング調査の成果を適切に引き継ぐ。
